こんにちは。ちとせの出口です。

近所では梅が咲き、冬の定番「ヒートテック」の着用を後悔する日も増えてきました。
もうすぐそこまできている春を待ちわびつつ、今月号のHOTTOPICSをはじめます。


 

● 藤田が内閣官房のバイオ戦略有識者会議のメンバーに

内閣官房が設置した「バイオ戦略有識者会議」のメンバーに、ちとせグループの代表藤田が就任致しました。

バイオ戦略有識者会議の初会合は2月12日に行われ、そこで藤田は『世界に先駆けてバイオ社会を発展・推進させる国家戦略のあり方への私案』というタイトルでプレゼンし、バイオ業界に大きな投資を集めるにはどうするべきかという視点で意見を言ったと聞いています。後日、内閣官房のWEBサイトにて議事要旨が公開される予定だそうです。

藤田がどんなことを考えているのか、近々本人の言葉で語ってもらうつもりなので乞うご期待ください!

ちなみに、ゴジラの対策を検討していた会議室みたいだった!とのこと。


 

● JAXAの宇宙探査イノベーションフォーラムにてプロトタイプをお披露目

宇宙探査イノベーションハブでの活動にフィードバックをかけることを目的として開催される「宇宙探査オープンイノベーションフォーラム」の展示会場にて、昨年採択された研究提案募集「穀物に頼らないコンパクトなタンパク質生産システム」のプロトタイプをお披露目しました。

▶本プロジェクトの詳細はこちら
宇宙での活用も視野に入れたコンパクトな藻類培養装置の開発

▶プレスリリースはこちら
宇宙の食にも「藻」が貢献! 藻類スピルリナでコンパクトなタンパク質生産システムをつくる -JAXA宇宙探査イノベーションハブの研究提案に採択-

東京と大阪で開催された本フォーラム。
本研究開発の主担当である松本から開発している装置の話と当日の様子をお届けします!

◯松本 和(ちとせ研究所 研究開発部 バイオエンジニア):

2019年2月22日8時42分 はやぶさ2の小惑星リュウグウへのタッチダウン成功の知らせを聞き、魂を揺さぶられた方もいらっしゃったかと思います。もちろん私もその一人です。

そんな宇宙に魅了されている私は現在、宇宙農業の実現に向けてまったく新しいコンセプトの藻類培養装置の開発を行っています!

一般的に藻類を培養するためには多くの水が必須ですが、私の開発している培養装置は宇宙での運用を想定しています。そのため、最も貴重な資源の一つである水をほとんど使用することなく培養できることが最大の特徴です。また、光源と培養物が密着しているので、培養スペースも極めてコンパクトにすることができます。つまり水をはじめ様々な資源やスペースが貴重な宇宙空間において、極めて少ない資源とスペースで毎日新鮮で栄養満点なスピルリナを収穫できるというものです。

そして先日、約半年間の様々な試行錯誤の結果なんとか完成させた新型藻類培養装置のプロトタイプを「宇宙探査オープンイノベーションフォーラム」にて初お披露目してきました!

フォーラム会場では、完全水耕栽培による未来の農業技術の開発や、虫型宇宙探査用小型ロボットの開発など、「THE 未来」なテーマが盛りだくさん。そんな中、私達のブースにもたくさんの人が足を運んでくださり、藻の宇宙食としての可能性や宇宙空間における生命維持装置としての応用など、熱心に質問をしていただきました。

プロトタイプは実際に藻を培養している状態で展示していたのですが、藻が高濃度にべっとりと増殖している様子に驚かれる方が多く、専門的に藻の研究をしてきた人ほど今回展示した培養装置のコンセプトや培養状況に驚かれていたという印象を受けました。

今回のフォーラムに参加し、普段から宇宙開発に従事している人や、あまり関わりの少ない業界の方と意見交換をすることで、ちとせ研究所として目指す場所、求められている技術がおぼろげながら見えてきたと感じました。また、自分の言葉で自分の研究を説明する経験は、私の自信にも繋がったように思います。

今後は藻の収穫量の増加や、さらなる省スペース化など、新型培養装置の開発を本格的に加速していきます。

まだまだ走り出したプロジェクトですが、これからもっと大きなプロジェクトに成長させ、世界にまだない新しい価値観を創造していきます。応援よろしくお願いします!

▶こちらの記事もぜひ御覧ください!
月で藻を栽培せよ! JAXAとちとせ研究所が目指す「未来の宇宙食」


 

● ブルネイ政府機関の方がお越しくださいました

2月26-27日の2日間、日本のブルネイダルサラーム大使館にて「ブルネイウィーク」が開催されました。

ブルネイ政府には、タベルモのブルネイ進出にあたり非常にお世話になっています。また、まだ極秘の別プロジェクトについても話を進めていたりします。

そこで、ブルネイウィークの期間中に、政府機関BEDB(Brunei Economic Development Board:経済開発委員会)のAssistant CEO, Mr. Abdurahman Abdul AzizとExecutive Officer, Mr. Lim Chee Yawがちとせへ見学に来てくださいました。

左から、星野、伊香、釘宮、Assistant CEO, Mr Abdurahman Abdul Aziz、Executive Officer, Mr. Lim Chee Yaw

◯伊香 亮(事業開発部 リサーチャー):

タベルモのブルネイ工場建設を進めるにあたり、ブルネイ政府機関の方々とコミュニケーションをとることが多くなりました。彼らとのコミュニケーションは基本的にWhat’s App。チャットの性質上メールよりも気軽なやり取りができることから雑談レベルの話も多くなり、特にMr. Chee Yawとは家族の話などプライベートな話題もやり取りする仲に。前回のブルネイ訪問では、滞在期間6日間のうち3日間もMr. Chee Yawとプライベートで一緒に食事をしたりブルネイの起源である水上集落を一緒に訪問するほどまでに仲が深まりました。

こうして密なコミュニケーションをとる中、日本で行われるブルネイウィークにちとせグループとして出席し、ブルネイで事業を行っている経験を日本の企業に共有してほしいという依頼がありました。そしてブルネイウィーク中の彼らのフリー時間に、ちとせのラボに来社してくれました。

タベルモ(生スピルリナ。今年の秋以降はブルネイでも生産する予定)を試飲してもらうと、『臭みがない!後味がない!』と驚きの様子。彼らが食したことがあるマレーシアや中国から輸入されるタブレットタイプのスピルリナとの味の違いを実感していただけたようです。また、バイオインフォマティクスの事業を行うラボ、藻類培養を行うラボ、細胞培養を行うラボを見学してもらった際には熱心に質問をしていただき、ブルネイに誘致するに適しているものはどれかという目線で真剣に話を聞いていただけました。

バイオインフォマティクスの事業を行うラボにて。シークエンス技術の進歩によりヒトゲノムを一晩で10人分も読むことができるようになったという話をしている様子。
データ解析に使う情報量はおよそ数億〜数百億文字(まさにビックデータ!)で、
図書館1つ分に値すると伝えると驚いていた。

 

政府機関のBEDBは海外からブルネイに投資をする際に最初の玄関口となる機関。現在バイオを含むテクノロジー産業、エコツーリズム産業、石油&ガスの下流産業等、5分野を優先分野として投資の促進をしてます。今後投資活動が活発化するブルネイの政府機関の方々にラボを見学してもらい、我々の事を知ってもらうことができましたので、ブルネイでの活動を広げて行くにあたり、また、特にMr. Chee Yawとは気の合う友人として、この関係を大切にしたいと考えております。


 

● 藻類ビジネスセミナー開催

サイエンス&テクノロジー株式会社が主催するセミナーにて、ちとせ研究所CPO 中原剣、および藻類活用本部 本部長 星野孝仁が「拡大するバイオエコノミー市場の中の”藻類”のポテンシャル ~藻類の基礎、生産技術・課題、藻類活用・ビジネス展開~」の題目で講師を務めました。

◯星野孝仁(ちとせ研究所 藻類活用本部 本部長):

毎度講演後、講演に関するアンケート結果を主催者様から頂きます。

これまでの多くの講演では、新規事業のネタ探しを目的として参加されている方や調査目的で参加される方が大多数を占めていました。ところが、今回は ”自分の研究における装置や研究の参考” としてという結果が一定数見られました。これまでこうしたケースは非常に限られていたような気がします。藻類に馴染みのない方達も、藻類を自社の研究開発の一端として取り扱い初めたのだなと感じました。

少しずつではありますが、流れが起き始めている気がします。色々な意味で気を引き締めねばなと、感じた講演会でした。


 

● 活躍しているOBとして緒方が東京農工大の懇談会に招待されました

東京農工大学開催の「第2回 ご活躍されているOB・OGと学長との懇談会」に、日本バイオデータ代表の緒方が招待されました。
http://www.tuat.ac.jp/NEWS/info/20190212_02.html

緒方は、東京農工大の博士課程在学中の2012年より学生ベンチャーとして解析サービスの提供を開始しています。その後、2013年に「日本バイオデータ」を設立し、同年にちとせグループに入りました。
ちなみに、博士号は日本で初めてNGSを用いたバイオビッグデータ解析を行った研究で取得したそう。

▶日本バイオデータに関してより詳しくはこちら
生物学者の視点でデータの意味を探り当てる -日本バイオデータとは-

◯緒方 法親(日本バイオデータ 代表):

農工大には学部から博士まで9年間お世話になりました。研究も営業も商売もやる博士を育てよう、という先生方のご指導により、現在恵まれた環境でのびのびと活動できています。久しぶりに訪問した母校は思っていたよりもずっと懐かしい感じがしました。多様なキャリアパスを目指す若い人たちの応援団となれるよう、挑戦を続けていきたいと思います。


 

● 新メンバーが入りました!

先月もまた新しいメンバーが入ってくれました!

◯坂口 航平(研究開発部):
きっかけは、微生物の研究を行なっている企業を探している時に生物工学会誌のキャリアデザインの中の釘宮取締役の記事(※)を読んだことでした。採用面接の過程で様々な部署の方とお話し、生物を利用するために色々な角度から研究開発に取り組んでいることがわかり、魅力的な会社だなと感じ、入社いたしました。

※2014年の生物工学会誌より
バイオ系のキャリアデザイン「新卒でベンチャーを選んでみて」

◯赤坂 直紀(研究開発部):
前職では酢酸菌や麹菌といった、醸造微生物の研究を行っていました。その中で、彼らが持つものづくりの力に大変驚かされ、かつ魅了されました。微生物が持つ可能性をもっと引き出したいと強く考えていたところ、バクテリアから藻類まで、様々な微生物の育種開発を行っているちとせ研究所の公募を目にしたのが、応募・入社のきっかけです。微生物たちのまだ見ぬ面白い顔を、粘り強く探索していきたいと考えています。



◯小嶋 慎也(事業開発部):
私のちとせ研究所とのご縁は、2006年に遡ります。
当時、某製薬会社で外部委託先の窓口をしていました。その時ある役員からちとせ研究所を紹介されて仕事をすることになり、それから5年間DMTの技術を活用したCHO細胞の改良に関するお仕事が続きました。

その後月日が流れた2017年の4月。仕事でシンガポールに行くことになり、ちょうど藤田さんもシンガポールに居ると言うので、当時の製薬会社のバイオ研究のリーダーと面談してもらいました。その時、DMT技術について熱く語っていた藤田さんをよく覚えています。面談後、昼食を摂っているとき藤田さんから「新たなCHO細胞が出来たんだけど、世界にCHO細胞を広めてくれる人がいないんですよ」と言われ、自然に「面白そうですね」といったのがちとせ研究所に入社するきっかけになりました。

それからおよそ1年半の間、今流行りの兼業をしながらちとせ研究所の仕事を手伝ってきましたが、この度正式に入社しました。これだけインターン期間の長い社員はいないでしょうね。

社外の人たちにちとせ研究所の話をするたびに、面白そうな会社に入られましたねと言って頂いています。もちろん面白いだけでは会社は成り立ちませんが、傍から見て面白そうであることは会社として重要なことだと思っています。私自身、これからも面白く仕事をすることを極めたいと思います。

 

編集後記

「気持ちを使うのも投資」

言っても伝わらないであろう相手のためにあれこれ頭を悩ませていた時、とある人に言われてほんとそうだなあと共感したセリフです。

相手のためと思って言ったことでも、受け取る側の状態によっては全く伝わらない。下手するとうざがられたり恨まれることもある。と思いきや、数年の時を経て伝わることもある。

「相手のため」ってなんなんだろう。
おせっかいと受け取られるときとの違いはどこにあるんだろう。

基本的に、相手が望んでいないことはしない、言わない、というのがいいのでしょうか。
望んでいることだけを言ったりしたりすることは相手のためになるのでしょうか。

相手のためと言いつつ自己満足のためにやってるよね?という行為も、一概に悪いわけではないし、それが結局相手のためになることもある。ある程度自己満足がないと、できないこともたくさんある・・・などと考えだしたらドツボにはまりました。

と、あれこれ考えてみた結果ただひとつ言えるのは、時間もお金も気持ちも、なるべく価値があると思えることだけに使いたいなということ。自分で価値あると思えたなら、それだけで十分なのかもしれません。

 

次回のHottopicsは4月上旬を予定しております。
ご意見、ご感想、お問い合わせは「news@chitose-bio.com」まで。