こんにちは。ちとせの出口です。

春が来ましたね!あぁ、どうして春ってこんなにわくわくした気持ちになるのでしょう。

と純粋に春を満喫したいところですが、花粉症の私にとって春の訪れは少々つらいです。そういえば、今年89歳になる祖母がついに花粉症を発症したとのこと。免疫機能がしっかり働いているということだから、元気な証拠なのかも?


 

● WEBサイトリニューアル&ちとせジャーナルの英語版も運用開始

ちとせで数々のWEBサイト制作に携わってきた私ですが(ディレクション&自作含め、実は合計10近くあります)、初めて作ったサイトをこの度大々的にリニューアルしました。

新しいサイトはこちら https://chitose-bio.com/jp/

昨年10月末の「0to1プロジェクト」の発表に合わせて日本語版を急ぎでリリースし、その後こつこつと手を加え続けると同時に、英語版公開に向けて翻訳を進めてきました。つまり、”完璧な状態”にしてから公開したわけではないので、『じゃーん!ついに完成しましたー!!』感がなく、達成感が薄いというのがリアルなところ・・・。

と、それはさておき、実にたくさんの方に協力いただいて作成したサイトであり、たくさんのメンバーの想いが詰まっている素敵なものが完成したと自負しているのでぜひご覧になっていただきたいです!

翻訳にあたっては、昨年夏にちとせにJOINしてマルチに活躍している日英共に堪能なArthur、日本人以上に日本人らしいのではないかとさえ感じる感性を持ち、これまたマルチに活躍しているシンガポール人のNickaila、そして以前ちとせで切磋琢磨した仲間で今は治験翻訳家を目指しているAさんの3名に全面的に協力してもらいました。

代表藤田の日本語は英訳しにくいともっぱらの評判なのですが、感性豊かなメンバーのおかげで伝わる英語に仕上がった、はず!

 

ここで少しだけ以前のサイトの話をさせてください。

めちゃくちゃ思い入れのある以前のサイト。 今では当たり前のパララックス効果を取り入れて、動きに遊びを持たせていました。 素敵なデザインのサイトクリップ集に載るなど、 デザイン性の高さを評価いただくという嬉しい一面も。

2013年に研究職で応募して事業開発で採用された私ですが、2014年秋頃からコーポレートブランディングの仕事にじわりじわりと従事するようになりました。一番最初に取り組んだのはちとせの企業イメージ「COMPANY’S VISUAL IMAGE」の制作(※)。その後、その絵を活かしてちとせのサイト制作に取り組みました。
※過去のHOTTOPICSでこの話題にふれているので興味がある方はぜひ!
https://journal.chitose-bio.com/hottopics52/#a

初めてのサイト制作は、「WEBサイトってどうやって作るの?どんな仕組みで動いてるの?何から手をつけたらいいの???え、なにもわからない!!!」という状態からのスタート。社内に教えてくれる人はいないし、不安な気持ちでいっぱいだったことをよく覚えています。(WEBデザイナーさんに多大な迷惑をかけたなと今となっては申し訳ない気持ちでいっぱいです・・。)

細部まで拘り、何度も何度もやり取りを繰り返して完成させたサイトは、ちとせに入って初めて達成感を感じた仕事でした。

ただ、今になって思うのは、「公開したら終わり」ではなく、「公開してからがスタート」だということ。当時の私にはその認識がまだ持てておらず、継続的にWEBサイトを育てていく仕組みを作るというところまで頭がまわっていませんでした。

新しいサイトは、プロジェクト情報も事業体情報も柔軟に増やしていける仕組みにしています。また、CHITOSE JOURNALとも連携し、様々な情報が集まる “ちとせのプラットホーム” として育てていけるサイトにしたつもりです。

 

…と、思いがつまりすぎていて、だいぶ長々と書いてしまったのですが、最後にもうひとつ。

海外、特に東南アジアでの活動が活発になってきたことから、CHITOSE JOURNALの英語版の運用も開始しました。英語のコンテンツに関してまだまだ課題はありますが、海外での認知度もあげていけるよう、運用しながら最適化していければと思っています。

▶英語版CHITOSE JOURNALはこちら

 

ところで、「達成感」を感じにくくなったのは、世の中のほとんどの物事は柔軟に変化を受け入れながら常に最適解を求めて努力し続ける必要がある、ということが身を持ってわかるようになったからなのかもしれないなーなんてことを思いました。

 

● 農「芸」化学会が開催されました

HOTTOPICSの読者のみなさまには馴染みが強いであろう学会、日本農芸化学会2019年度大会が3月末に東京にて開催されました。参加した笠原と東田からのレポートをお届けします。

◯笠原 堅(ちとせ研究所 菌叢活用本部 本部長 兼 フローラインデックス 代表取締役CTO):

シンポジウム4S19「マイクロバイオーム研究から新産業創出に向けた技術的課題と取り組み」にて、「マイクロバイオーム産業の経済効果」というタイトルで発表してきました。今回は、ちとせとしてではなく、ちとせも参画する一般社団法人日本マイクロバイオームコンソーシアム(JMBC)の運営副委員長兼研究開発部会長としての発表です。
マイクロバイオーム研究を活かした産業を創出するためには、どのようなデータをどれだけの品質で取得できるかが勝負を分けます。私以外の演者は、データの品質を高めるための推奨プロトコルや計測標準物質の整備状況についてご紹介されていました。私は、マイクロバイオーム研究の成果を社会実装するために、マイクロバイオームデータを最大限生かすために、マイクロバイオームデータの取得方法と活用方法をどのように決め、どう世界に普及させようとしているかJMBCの取り組みを中心に紹介しました。
マイクロバイオームに注目が集まっている中、この状況をブームで終わらせずに新産業を産み育てていくために、JMBCとしての活動もより一層加速する必要があるとの想いを訴えてきました。

◯東田 英毅(ちとせ研究所 フェロー):

シンポジウム3S13「生合成マシナリからリデザインへ」にて「不均衡変異導入にもとづく実用的な微生物育種方法」と題する講演と、シンポジウム4S24「『農芸化学』でバイオエコノミーを支え、拓く」では、バイオインダストリー協会新資源生物変換研究会の一員として、世話人と座長、さらに開会の挨拶を担当しました。

不均衡変異導入法はご存知の通り(ですよね!)、生物の能力を引き出す育種・改良を効果的におこなうこと、ちとせのコア技術です。少し長めの発表時間がいただけたので、原理のところからしっかりお話することが出来ました。
シンポジウムの方は、ちとせの事業そのものではなく、農芸化学とは?バイオエコノミーとは?といった、これからの学術や世界の大枠をまず定義して、それに知見をお持ちの6人の先生にお話しいただきました。3人の世話人が集まって喧々諤々議論して選んだ先生方が、みな快く講演を引き受けて下さって、とても助かりました(しかも皆さん超クイックレスポンスでした!)。座長、と言ってもエライ人ではなく、タイムキーパーやマイクランナーも兼ねるという、手作り感あふれる部分もありましたが、100人を超える参加者があったとのこと、成功裏に終わりました。地球に対するフェアトレードとも表現されるバイオエコノミーに、生命・食・環境をフィールドとする農芸化学がどう貢献できるか、昨今話題のビッグデータを用いることで日本の強みを出せるか、といった、あまり他ではされていない議論が活発におこなわれました。

ちなみに会場の東京農業大学世田谷キャンパスは「桜丘」というところにあります。その名の通り学内外に桜の木がたくさんあり、ちょうど5分咲きぐらいで、目を楽しませてくれていました。

余談ですが、みなさんは農芸化学の「芸」に込められた意味を考えたことがありますか?

技術・芸術を意味する「芸」。農芸化学の「芸」の字には、コントロールしきれない偶然の要素を受け入れる、そして技術は人に宿る、という意味が込められていると考えています。この話は完全に受け売りなのですが、これを初めて聞いた時、妙に納得したのを覚えています。

欧米には「農芸化学」に匹敵する単語がないそうです。
これが、バイオの分野における日本と欧米のアプローチや価値観の違いに現れている気がしてなりません。

農芸化学は生き物らしさあふれる分野。この分野を選択する人たちもまた生き物らしさ溢れる人が多く、だからこそこの世界に身をおいていたいと感じた私でした。

「農芸化学」の名の由来に関しては、以下に詳しく書かれているので興味のある方はご覧ください。

「農芸化学」という名前の由来は?


 

● ベンチャー企業の国際展開における課題とその克服に向けて

神戸市および公益財団法人 神戸医療産業都市推進機構が主催した「国際展開セミナー ~ ベンチャー企業の国際展開における課題とその克服に向けて~」にちとせグループ代表の藤田朋宏が招待いただき、講演とパネルディスカッションを行いました。

◯藤田 朋宏(ちとせグループ代表):

ベンチャー企業を支援するという職業があります。
日本のベンチャー振興機運の高まりに比例して、10年前などと比べると、この分野の職に就いている人の中で、職業人としてかなりしっかりとした方の割合が増えていると感じます。今回のセミナーでお話した方々からも、どの方も情熱を持って仕事に取り組んでおられて、同様の感想をもちました。

ベンチャー支援業の方が増えるに連れ、ベンチャー企業論について話をさせてもらうことが増えています。

今回は、ベンチャーがグローバルに展開するためにはどうするかがメインテーマだったのですが、「グローバル展開って目的ではなくて手段ですよね。」「手段を目的にすると良くないことが起きますよ。」ということが、最初から最後まで藤田の主張でした。

かれこれ15年もベンチャー企業の経営をしているので、ありとあらゆるタイプの失敗を積み重ねてきました。藤田のそんな経験からくる現実感を持った話は、実際に今、似たような状況に直面している誰かのお役に立てるのかなと感じています。

一方で、15年もベンチャー経営していますが、成功したと感じたことは一度もありません。謙遜でもなんでもなく「上手く行ったぜ」と感じたことが一度もないのです。ですので、成功の秘訣はとか聞かれるとすっごく困ります。成功したことないので。

一般に、ベンチャー企業の育成において、成功事例を集めて、その最大公約数を整理してても、「経営者の情熱」とか「技術の優位性」とか、至極当たり前の結論しか導き出せないと思うのです。多くの失敗したベンチャーにも、経営者の情熱はあったはずですし、もしかしたら失敗した会社の方が、技術の優位性はあったのではないかと思ったりもします。

そんな中、ベンチャー企業の成功の方法はわからなくても、生き残っていく確率を少しでも高めるための方法について、藤田なりの「答え」の幻や影のようなものは、若い頃よりも捉えられるようになってきているようにも感じます。そんなことは気のせいで一生よくわからないままのような気もします。

とにかく、自分でもまだまだ霞か雲を掴むような話なのです。ですので、このような場でどんなに経験豊かなベンチャー企業支援業の人に何をどう話したとしても、ベンチャー経営をしていくための「現実感」とか「実態」を伝えるのはなかなか難しいことだなと今回も感じました。

今回の会も、主催者であるベンチャー支援業の人の「受け」は一切狙わずに、正直に包み隠さず、今ベンチャー企業の経営で数々の課題に直面して困っているどなたか一人のために、少しでも役に立てば良いなと思っていろいろな話をさせて頂きました。

そんな、藤田でもお役に立てる場がありましたら、また呼んで頂ければと思います。


 

● NHKにてタベルモの取り組みを紹介いただきました

2019年3月7日(木)に放送されたNHK総合「ニュース シブ5時」の「<特集5時>私たちの未来を変える!?驚異の微生物」にて、株式会社タベルモの取り組みが紹介されました。

番組では約5分間にわたり、タベルモ代表佐々木のコメントや、掛川でのスピルリナ栽培の様子などが放送されました!

それでは、取材を受けた佐々木よりレポートをお届けします。

◯佐々木 俊弥(タベルモ 代表取締役社長):

微生物の活躍をテーマにタベルモ社のスピルリナについて取材がありました。
タンパク質の生産性が大豆の10倍以上高いことから、私達の取り組みが食糧危機の解決策として注目されている、という内容です。

スピルリナのタンパク質は70%という高含有率を誇ります。これは、光合成のためにクロロフィル以外にもフィコシアニンという青色の色素タンパク質を貯めることが大きく寄与しています。視聴者の分かりやすさのために、フィコシアニンや青色色素といった言葉は全てカットされ、徹底して「タンパク質」として紹介されました。情報を詰め込み過ぎない分、シンプルで伝わりやすく、一生懸命のあまり多くの情報をいつも並べてしまう自分を省みることもできた取材でした。

色々交渉したのですが、NHKは会社名も商品名も出せないんです、ということで、タベルモや生スピルリナの情報はほぼ流れませんでした。タベルモTシャツを作ろう。そして替えの服など無いと言い張ろう。そう心に刻みました。

それでもNHKパワーは凄まじく、わざわざNHKに電話して当社の電話番号を割り出すお客様が多くいたことに驚きました。

テレビで報道されることは、お客様からの反応ももちろんなのですが、社内全体が、やはり自分たちはすごいことをしているのだ、と再認識できることに毎回良さを感じます。私以上に喜んでくれる周囲の反応を見て、そのことをジーンと噛みしめました。

ブルネイでは工場建設と栽培が着々と進んでおり、秋には日本に届く予定です。商品の切り口でも沢山取材されるように、食べる藻市場をどんどん盛り上げていきます。


 

● メンバーの執筆記事を紹介します

JBPressで連載中、藤田の『内側から問い直す日本のベンチャー業界の“常識”』シリーズ。
第5弾の今回は、バイオ界隈の皆様はもちろんご存知であろう「ゲノム編集」をぶった切っています。(ゲノム編集を否定しているわけではないですよ)

“ゲノム編集”というエサで釣る人、釣られる人

NewsInsightの連載『藤田朋宏の必殺仕分け人』の第4弾も公開しています。
なかなか面白い視点で、妙に納得感がありました。

その面倒な組織カルチャー、印鑑が原因ですよ

また、現在進行中の発酵AIのプロジェクトに関する話を、ちとせ研究所 菌叢活用本部長の笠原がバイオインダストリー協会の機関紙「バイオサイエンスとインダストリー(B&I)」にて寄稿したので紹介します。

バイオとデジタルの融合 人の制御を超えたバイオ生産マネジメントにおけるAIの活用

 

● 新メンバーが入りました!

先月もまた新しいメンバーが入ってくれました!

◯本庄 亮太(Agriculture Expert @マレーシア):
私は10年間広島の農協で農業指導員として様々な作物の指導を行ってまいりました。
その後マレーシアの会社で4年間農園の経営運営を行っていました。

この度、ちとせと一緒に仕事をする事により日本で学んだ知識と、マレーシアで得た農園経営の経験・
販売の人脈を最大限に会社に活かす事ができ、東南アジアでの日本農業ビジネスの今後を牽引できると思って参画する事を決めました。

今後は、たくさんの方に美味し農産物を提供する事によりちとせブランドの名の下に笑顔の輪ができればと思います。今後ともよろしくお願いします。

 

 

編集後記

週末、洗足池公園でお花見をしていたら膝の上に桜の花が降ってきました。
わーかわいい!と思いよくよく見ると、蕾が3つついています。

咲くことなく落ちてしまったんだと思うと、切なくなり、一人で泣きそうになりました。

何か悲しいことや辛いことがあったとき、そこに理由を求めたくなります。ですが、理由なんてないことの方が多いような気がします。この蕾が落ちてきたのも、理由なんて無い。

いつ何が起きるかわからない、突然予期せぬ形で人生が終わるかもしれない。
わかっていることだけど、普段は考えないようにしているこんなことを、蕾が落ちてきたことで考えさせられた日曜の昼下がりでした。

 

次回のHOTTOPICSは5月上旬を予定しております。
ご意見、ご感想、お問い合わせは「news@chitose-bio.com」まで。