こんにちは。ちとせの出口です。

あっという間に今年最後のHottopicsとなりました。
普段は旧暦を使う機会が全くない私も、12月だけは「師走」の表現を使いたくなります。
「走」という文字に、年末の慌ただしさの実感が伴うからでしょうか。

 

 

● 注目のスタートアップに「タベルモ」が選ばれました

日経トレンディ12月号で世界を変えるスタートアップとして選んでいただいたり、日経本誌でタンパク質源を開発するスタートアップとして紹介いただいたり、Yahoo!JAPANのFQというメディアでフードテックの注目スタートアップとして紹介いただいたり、Forbes JAPAN 1月号の「200 SURPERSTAR ENTREPRENEURS」のBIO TECH部門で選んでいただいたりと、タベルモに注目が集まっていることを感じています。

日経トレンディ12月号で「世界を変えるスタートアップ大賞」11社に選ばれました!
また、同誌1月号の巻頭特集「丸わかり! これから日本に起きること 未来予測 キーワード&カレンダー」の食部門では、「タンパク質危機を藻と昆虫が救う」というタイトルでタベルモを大きく取り上げていただいています。

▶日経のWEB記事はこちら
タンパク質危機、新興企業に商機 昆虫や藻を活用
▶Yahoo!JAPANのFQの記事はこちら
「フードテック」は世界を救うか?海外・国内の注目のスタートアップ

「タンパク質」の切り口で紹介いただくことが増えていますが、将来的にタンパク質源として供給することを目指しつつ、まずは健康に良い “食材” として生活に浸透させること、そしてブルネイでの生産基盤を確立することにメンバー一丸となって全力を注いでいます。

▶スピルリナの食材としての魅力についてタベルモ代表の佐々木が語っています
60種類以上の栄養素がぎゅっとつまったバランス食品!「タベルモ」

先月、私自身とても久しぶりに、タベルモを生産している静岡県掛川市の工場(掛川バイオセンター)へ訪れました。おそらく4年ぶり。入社当初の2013年、まだ “タベルモ” という名もなかったころ、事業開発メンバーとしてプロジェクトを担当しており、頻繁に掛川に足を運んでいたため非常に懐かしかったです。すっかり立派な設備になった姿に感動しました。

お客様に説明している掛川バイオセンター センター長の笹田氏。たくさんお世話になっています
2013年に撮影した栽培池前での集合写真。後列の一番右が私。前列左から3番目が笹田氏。右から2番目は、ブルネイに設立したタベルモバイオファームの代表鈴鹿

活動や想いがあってこそ、”伝える” という仕事が成り立ちます。今回の掛川訪問は、現場の空気を感じることの大切さ、それが自分のエネルギーになることを改めて実感する機会となりました。

スピルリナが活き活きしていました

その場でしか食べることができない採れたてスピルリナをいただいて、帰路につきました。

ごま豆腐のようなプリンのような、なんとも言えない不思議な触感。シロップを混ぜたらデザートになりそう。

 

 

● シンガポール日本人会のオープンハウスに参加しました

先日、シンガポール日本人会の “オープンハウス” にて、Chitose Agriculture Initiativeのブースを出店しました。昨年に引き続き2回目の参加です。

左から小池(Director, COO)、Xuewei、福井(Director)。 いちごの被り物は、とある器用なちとせメンバーの手作りです。

それでは、当日のイベントの様子をシンガポールのEzanよりお届けしてもらいます!

◯Nur-Ezan Mohamed(Chitose Agriculture Initiative 事業開発部 Scientific Specialist):

Chitose Agriculture Initiative (CAI) participated in the open house charity event organized by The Japanese Association, Singapore(JA) on the 24th November 2018. The event attracted more than 1,000 people, both Japanese expats and non-Japanese. This is the second time for me to join this event. It reminded me of my time in Japan; observing visitors walking around in their Yukatas while enjoying street food like Takoyaki and Yakisoba. There was even a live tuna cutting session.

Due to the popularity of our JA booth last year, CAI was invited again as a vendor for our Chitose strawberries and tomatoes from Cameron Highlands as well as kaki-ichigo(100% shaved frozen strawberries). We were excited to be able to promote CAI produce; explaining to them our ethical sustainable practices of farming and our unique harvesting method of picking strawberries and tomatoes only at their most ripen state. Many people are surprised that we are able to grow high quality and safe Japanese produce in Cameron Highlands, since in the recent years the area had received bad press for their heavy usage of pesticides and chemical fertilizers. Our kaki-ichigo was very popular with both the young and old. Everyone looked happy to indulge in healthy shaved dessert made from 100% frozen strawberries. It was a fascinating sight for me to see children dragging their parents to the booth to get them a cup as well as customers happily taking selfies with our kaki ichigo. As food waste is a huge problem globally, we were able to explain to our customers that our kaki ichigo is made from strawberries which could have gone to waste just because they are not pretty enough for the supermarket shelves.

We are pleased to have sold out everything during the event and donated part of the sales proceeds to charity organisations selected by JA. We look forward to participate again next year!

大盛況だった “かきいちご” と共にバッチリ決めた福井(Director)

イベントにて販売した “ちとせいちご”と “ちとせとまと” は、マレーシアのキャメロンハイランドにて栽培しています。
『マレーシア産 “日本品質いちご” をきっかけに、アジア農業の未来をつくる』

先日、マレーシアの新聞『馬來西亞東方日報 Oriental Daily News Malaysia』にちとせのいちご栽培に関する記事が掲載されました。栽培までの道のりや、品質を保つための栽培方法、技術などについて紹介いただいているようです。「ようです」と書いたのは、記事が広東語だから・・。Google翻訳に突っ込めばなんとなく読めるから、とっても助かります。
【农情】引进金马仑栽种 日本草莓香甜多汁

いちご職人の木下が現地にて取材されたのですが、彼に取材に至った経緯を聞いたところ、「マレーシアの山奥でイチゴを育てている日本人ってパンダみたいなものですので。」と返されました。パンダ!(私の中ではパンダと言えば上野動物園ではなく南紀白浜アドベンチャーワールドです。)

 

 

● ちとせが目指す “広がっていく組織” とは

日刊工業新聞のWEB媒体 ニュースイッチにて、ちとせの人づくりについて掲載いただきました。我々が目指す “広がっていく組織” とは?それを実現するための方法とは?

▶記事はこちら
『「こうしたらいい」と言い出したら会社は終わりだ』

以前掲載いただいたこちらの記事も是非合わせてお読みください。
異色のバイオベンチャー「ちとせバイオ」、経営手法は“大企業と協業” -創業15年で時価総額100億円-

松木記者、いつもありがとうございます!

 

 

● インドで開催されたIEEE SENSORS 2018にて “電気顕微鏡” の発表を行いました

10月末にインドのニューデリーで開催された学会「IEEE SENSORS 2018」にて、日本バイオデータ代表の緒方がポスター発表をしました。

ポスター賞をもらったかのように勝手に花飾りをつける緒方

▶IEEEに投稿した論文はこちら(※電子ジャーナルの出版は後日です)
Norichika Ogata, et al., An Electrical Impedance Biosensor Array for Tracking Moving Cells, 2018 Conference Proceedings, IEEE Sensors Council, p.1557-1560, ISBN 978-1-5386-4707-3.

数年前から社内で聞こえていた「半導体」というバイオの世界ではあまり馴染みがない言葉。最近まで何をやっているのか全然知らなかったのですが、どうやら半導体技術を用いて、新しいバイオセンサーを開発していたそう。それを “電気顕微鏡” と名付けたようです。

▶共同研究先の東北大学と共に出したリリースはこちら
オートフォーカス・再生する電気顕微鏡 生体内で1細胞レベルの長時間追跡が可能に

緒方が開発した “電気顕微鏡” とは、溶液内で動く細胞を追跡するためのバイオセンサーであり、電気化学的特性(電気的振動)を利用して、細胞の形, サイズ, 動きを連続的に測定することができるものです。

このセンサーを用いて血液中の細胞をリアルタイムに観察できるようにするなどの応用を考えており、レントゲンや内視鏡と並ぶような人体イメージング技術として活用できるようにすることを緒方は目指しています。
※日本バイオデータとは別の事業体で展開する予定

◯緒方 法親(日本バイオデータ 代表):

参加の所感

はじめての電気電子系学会の参加で知り合いもおりませんので、学会を有意義に過ごすには、つまり、自分の研究をできるだけたくさんの人に聞いてもらって科学的妥当性を考えてもらいおかしいところを指摘してもらったり検証すべき仮説をもらったりするためには、口をきいてくれる人を増やす必要がありました。懇親会等で話しかけるほか、掲示ポスターに注目してもらうために発明をしました。それはじぶんポスター賞です。日本国内の学会で学生のポスター賞などには花のような飾りが貼り付けられます。その飾りは近所の文房具屋さんで200円で買えるので、それを持って行ってポスターの右上に貼っておきました。功を奏したのか、4人の査読者に加えて13人の参加者に検証してもらうことができました。電気顕微鏡の電気電子科学的説明の妥当性がかなり高いことがわかり、とても有意義でした。これで安心して電気顕微鏡ビジネスが展開できます。学会会場のホテルはとても綺麗なリゾートホテルで、サウナに入ったりプールで水球をして過ごすことができました。

大会長と懇親する緒方

参加の準備

アクセプトの連絡を受けたのち、ビザとワクチンの準備をしました。ビザは九段下のインド大使館で申請と受取ができるので、ついでに大使館側のビリヤニ屋さんと東京国立近代美術館にいきました。丁度「アジアにめざめたら」展をやっていて、アジビラやごぼう抜きの懐かしい世代にもおすすめでした。年末(12/24)までやっていると思います。ワクチンはA型肝炎、B型肝炎、破傷風、日本脳炎、狂犬病、チフスを打ち、計11回の注射を2日にわけて両腕に打たれました。その後飛行に乗るまでは大変順調でしたが、機内で横の席の人と話していたら「君の航空券はおかしいよ」と言われました。単に上海で飛行機を乗り継いでニューデリーに行くだけのつもりだったのですが、実は上海には国際空港が2つあって羽田と成田くらい離れており「トランジット」で空港間を移動する必要があったのです。空港の案内所では英語が使えませんでしたので、地下鉄にのってなんとなく漢字を眺めながらもうひとつの空港を目指しました。地下鉄は思ったよりもスムーズで、トラブルは3つしかありませんでした。ひとつは乗り換えの制限で、スイカのようなカードなら乗り換えられるけれども紙の切符では乗り換えられない駅があり、何度か乗り降りして目的の路線に乗り換えました。ふたつめは改札にある持ち物検査で、始発の電車の少し前にならないと持ち物検査がはじまらないために検査所のまえは長蛇の列ができ、始発の電車には乗れませんでした。みっつめは乗り換えで、電車のドアが開く時に乗る人も降りる人もドアの前に並んでおり、どちらも譲らなかったのでドアが開くと同時に押し合いになって怒号が響きました。次はリニアモーターカーに乗りたいです。インドでは特に困ったことはなく、16円のチャイ?や30円のカレーを食べて過ごしました。

ポスター会場の様子。乾季なので外です。

参加の理由

前回の情報系学会(※1)に引き続き、今回は電気電子系の学会に参加しました。バイオ系では馴染みの薄いやり方ですが、情報系あるいは電気電子系の学会では学会発表の前に論文投稿による査読が実施されます。私たちはバイオの出身ですので、どうしても他の学問に疎く、情報、あるいは電気電子の学問の観点で、自分たちの研究活動が科学的妥当性を有しているか否かの判定に自信がありません。ライフテクノロジー関連ビジネスの分野では、エリザベス・ホームズ率いるセラノス社が引き起こした700億円規模の投資詐欺事件に象徴されるように、科学的妥当性に欠けながら過剰な期待を煽るビジネス手法が問題になっており、ネイチャーバイオテクノロジー誌でも取り上げられています(※2)。科学コミュニティーへのデータのシェアや、査読を前提とした文書の提出なく事業展開を進めることは事業者、投資家の双方にとってリスクであると考えられ、こういった公開を重視する考え方が今後ますます普及すると考えています。それ以前に、自分たち自身が自分たちの解釈を過信している可能性は排除すべきです。そこで私たちの開発した装置とそれに基づく発見の科学的妥当性を明らかにするために、IEEE(米国電気電子学会)が主宰する学会への論文投稿を行いました。4人の専門家の査読を受けた上で学会会場で異議や検証すべき課題を集めることにしたのです。

シンポジウムの様子。こういった部屋が10個くらいとホールがあります。

※1. ICIC2017, Liverpool, UK [Best Paper Award] https://doi.org/10.1007/978-3-319-63312-1_46
※2. After Theranos, Emily Waltz, nature biotechnology https://www.nature.com/articles/nbt.3761

 

 

● 新連載『藤田朋宏の必殺仕分け人』を始めました

ビジネスニュースメディア NewsInsightにて、ちとせグループ代表藤田が新連載を始めました。その名も『藤田朋宏の必殺仕分け人』。そうです、藤田まことにかけてるんです。気づいた方いらっしゃいました…?
「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

また、グループ代表藤田のコラム「内側から問い直す日本のベンチャー業界の“常識”」の第三弾、『起業するなら「誰かに褒めてもらおう」と思うな!』も公開しました。
https://journal.chitose-bio.com/start-a-business/

▶第一回、第二回はこちらより御覧ください
第一回:ベンチャー業界は「死の谷」を言い訳にしていないか?
第二回:「最優秀賞」をもらえるビジネスプランの描き方 内側

サラサラ〜っとこんな長文を書いてしまう藤田を見ていると、普段から実に色んなことを考えている人なんだなぁ感じます。藤田の頭の中を覗くつもりで読んでいただけると嬉しいです。

 

編集後記

5年ほど前、物腰が柔らかくていつも優しい学生時代の先輩に、「どうしていつでも人に優しくできるんですか?」と聞いたことがあります。そしたら、「多分、自分にすごく自信があるからだと思う」と返ってきました。その時の私にはその答えがすごく意外で印象的で、それでいてとても納得したことを覚えています。

このエピソードを思い出したのは、先月「謙虚さ」を失いかけているなと感じた瞬間があったから。

忙しくて余裕がなくて優しさや謙虚さを失うということは、結局 ”本物の自信” を手にしていないからなんじゃないかなぁと思いました。本物の謙虚さは、本物の自信の先にあるのかも。まだまだブレがある私は、これからもこつこつ経験と実績を積み重ねていくしかないのだろうなぁと感じています。

『実るほど頭を垂れる稲穂かな』ですね。