こんにちは。ちとせの出口です。

今月、私はずっと関東に籠もって(?)いたにも関わらず、扱う話題がブルネイにドバイに京都と、なんともグローバルな11月号です。

 

 

● タベルモブルネイ新工場のローンチセレモニーを開催しました!

近い将来訪れると想定される「タンパク質危機」という社会課題を “藻(スピルリナ)” で解決することを目指し、2014年7月に設立した「株式会社タベルモ」。2018年には三菱商事とINCJより総額17億円の資金調達を実施しました。

その後、スピルリナの生産拠点を日射量が豊富なブルネイに作るべく準備を進めてまいりましたが、ついに工場が完成し、10月22日にローンチセレモニーを行いました。

▷参考
・[プレスリリース]世界初新鮮な生スピルリナを生産・販売するタベルモ ブルネイの新工場が竣工 -スピルリナで将来のたんぱく質需要増大へ対応、生産能力10倍へ-
https://chitose-bio.com/jp/news/2967/

・[現地メディア]Launch of Spirulina Cultivation Company
https://bruneimirror.com/2019/10/22/launch-of-spirulina-cultivation-company/

毎月のように日本からブルネイに足を運んで、ブルネイ工場建設へ精力的に携わってきた伊香より、セレモニー当日のレポートをお送りします!

◯伊香 亮(Tech & Biz Development Div. Senior Manager):

サラマッパギッ!! 開所式のアレンジを始めた時からこの記事を書くことを楽しみにしていた伊香です。タベルモに対するブルネイという国の期待と、現地の熱気を帯びた(暑いから?)素晴らしい雰囲気を少しでもお伝えしたいと思っていますので、少しの間お時間をいただければと思います。

令和元年10月22日(火)、日本国内が即位礼正殿の儀で沸く中、ブルネイにてタベルモブルネイ新工場のローンチセレモニーを行いました。
まずは、セレモニーに至るまでの道のりと、当日の雰囲気をお伝えしたいと思います。

赤道直下のブルネイで野外でのセレモニーを行うには、仮設テントとクーラーが必須です。テント内のレイアウトやデコレーションを決めるために、何度も業者と打ち合わせを行った結果、素晴らしい会場が出来上がりました。

(左)テントの外観、(右)テント内の様子


セレモニーの前日、会場設営が完了した後にリハーサルを行いました。スタッフ達も何度も何度も人の動きや順番の確認を遅くまで念入りに行っていました。

セレモニーのリハーサルを行うタベルモブルネイのメンバー


さて、セレモニー当日ですが、主賓として第一資源・観光大臣Yang Berhormat Dato Seri Setia Awang Haji Ali bin Apong(Dato Ali)にお越しいただきました。

(左)Dato Ali大臣を迎える藤田、(右)セレモニー前の様子


国営のテレビ・ラジオの放送局であるRadio Television Bruneiを始めとした多くの報道陣にもご来場いただき、その様子がブルネイ全土に放送されるという緊張感の中、タベルモブルネイのManaging Director(代表)の鈴鹿がオープニングスピーチを行いました。

ここで、「タベルモブルネイでバイオエンジニアとして働く妻、3歳になる息子、そして日本から連れてきたネコと共にブルネイで暮らしています。」と言って笑いを誘った鈴鹿に、当日の気持ちや様子を少し語ってもらおうと思います。

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Dato Ali大臣や山本大使をはじめ、多くのブルネイ政府機関から地位ある方々にご参列いただき、私の英語での初スピーチは笑っちゃうほど豪華な聴衆となりました。Dato Ali大臣はとてもに気さくな方で、彼を出迎えた際にかけていただいた「おはようございます!」という日本語で、私の緊張が一気にほぐれました。たどたどしいスピーチながらも、これまでお世話になった方々に直接お礼の言葉を伝えることができ、素晴らしい機会となりました。
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スピーチをするタベルモブルネイ代表の鈴鹿



山本栄二駐ブルネイ特命全権大使にはご出席とご祝辞をいただき、「タベルモは、日本の最先端のバイオテクノロジーを駆使しながら、ブルネイの気候を最大限に活かすというベストミックスの結果であり、経済活動の多角化に貢献するでしょう。(中略)この日本とブルネイの協力は、ブルネイのLNG輸入を始めとして様々なビジネスを通して50年以上続く関係における、新しいコラボレーションの形となります。」と、本プロジェクトへの期待の言葉を頂戴致しました。セレモニー中盤ではリボンカットを行い、Dato Ali大臣には主賓としてご来場いただいた記念にタベルモロゴのステンドグラスにサインを頂きました。

(左上)山本大使によるスピーチ、(右上)リボンカットの様子、(下)来賓の皆様との集合写真


タベルモブルネイ工場で生産したタベルモを使ったドリンクを、特別ゲストの方々に試飲していただきました。飲んだ後に皆様の笑顔を見ることができ、ホッと胸をなでおろしました。商品説明を行ったタベルモCEOの佐々木は、マレー語の挨拶をたどたどしく行うという手法で笑いを取っていました。

(左)試飲の様子、(右)商品の説明をするタベルモ代表の佐々木


試飲後は、冷凍機やパッケージマシン、マイナス40度の冷凍保管庫といった工場の設備を見学いただきました。特にマイナス40度の冷凍保管庫は体感したことのない寒さに、御一行は興味津々でした。(普段は専用の作業着、キャップ、ブーツを着用しております。)

(左)工場見学の様子、(右)マイナス40度の冷凍保管庫にて


工場見学の後には、大臣を始めとした特別ゲストの方々と食事会を行いました。会場では一般のゲストの方々にもタベルモの試飲をふるまいましたが、タベルモの大きな特徴である「無味無臭」に驚いている様子が会場のあちらこちらで見受けられました。当日は、90名を超えるゲストの方々にご来場いただくことができ、セレモニーを大盛況のうちに終えることができました。

(左)ゲストの方々との食事会の様子、(右)多くの方々にご来場いただきました


今回セレモニーや当日の準備をテキパキとこなすタベルモブルネイのメンバーを見ていて、このローンチセレモニーを成功裏に終えた事はもちろん、タイトなスケジュールにもかかわらず今年5月に予定通り工場建設を完工させた事や、工場操業開始の為に様々な許認可を滞りなく取得した事など様々なことが、頼もしい現地のメンバーの存在があったからこそ可能だったのだなと改めて感じました。

ちとせグループ全体にも言えることですが、タベルモは本当に強い想いを持ったメンバーたちが集まり、会社の財産ともいえる素晴らしい雰囲気とよい人間関係を築き上げている事が、事業を推し進める原動力になっているのだと思います。私は昨年から月に1回以上の頻度でブルネイに出張し工場建設や事務所立ち上げに携わっていますが、その出張を一度も後ろ向きにとらえる事が無かったのは、現地に大切な仲間たちがいて、温かく迎え入れてくれるからだなと感じました。

タベルモブルネイのメンバーたち


この記事を読んでいただいた皆様と次回お会いするときは、是非ブルネイの話をさせていただければと思います。大好きになったブルネイとタベルモ、そしてタベルモブルネイのメンバーの事を語りだすと、少し熱が入りすぎてしまうかもしれませんが、どうぞご容赦いただければと思います。(笑)

セレモニーが終わって間もない、高揚感が続く機内の中にて
伊香 亮

 

 

● 「農学研究が真の実学研究たるためへの提言」(講義レポート)

ちとせグループが以前からお世話になっている京都大学農学部発酵生理及び醸造学研究室主催で、代表の藤田が上記のテーマにて特別講義を行いました。

◯勝山 久蔵(CEO Office):

今回の講義は、京都大学農学部の先生方、研究員の方々や学生の皆様に向けて開催されました。

(講義前に藤田が、「今回、大学の先生達に話す話として、随分重たいテーマを設定されてしまったよねぇ。46歳で話して良いテーマなのかな。」とこっそりこぼしているのを聞いて、このテーマで話すことを藤田がいかに重く捉えているかが伝わってきました。)

本講義では、世界中の研究開発に対して流れ込む資金が動く名目が急速に変化し、そして新しい名目の下で動く資金の量が莫大になってきている事実を共有し、さらに、日本のバイオ産業の基盤を担う研究を先細りさせない為には、大学の研究者もこの資金の流れの変化を把握した上で研究を進めることが重要なのではないかと提案しました。(下図をご参照ください)



本講義は大学の研究以外でのお金の流れも含んだ内容だったため、大学で働く皆様にとっては直接関係のない話だと思われかねませんでした。しかし、講義が進むにつれて受講して下さった方々が徐々に藤田の話にのめりこんでいく様子がうかがえました。

大学の先生方をも巻き込んでこのような雰囲気をつくることができた一番の理由は、

「バイオ基点の社会づくりに貢献したい」
「海外に流出してしまった発酵産業を、あらゆる産業に携わる人々と一体になって日本に取り戻したい」

という藤田の純粋かつ覚悟ある意志が、皆様にしっかりと伝わったからだと思います。

多くの皆様から、共感やポジティブなご意見をいただいたことを思うと、「バイオ基点の社会づくり」を実現していく為に、ちとせは今回のように先頭に立って皆様を巻き込みながら協力関係を築いていく責務と、皆様からの期待を背負っているのだと改めて感じました。

名だたる先生方や日本の将来を担う学生の皆様の前での講義は、「バイオ基点の社会づくり」を進める為に重要な、科学と事業を繋ぐ架け橋のきっかけになる事を期待せずにはいられないような大変貴重な時間でした。

改めまして、京都大学、特に発酵生理及び醸造学研究室の方々に感謝申し上げます。


ちとせグループは、発酵産業を日本に取り戻すために、実際に国をあげたプロジェクトを牽引しています。

▷参考
・[プレスリリース]AIによる微生物培養手法の最適化で、培養効率の大幅な向上を目指す -NEDOの助成事業に採択-
https://chitose-bio.com/jp/news/2843/

 

 

● ドバイにて、中東最大の技術展示会に参加しました

ドバイで開催された中東最大の技術展示会 GITEX Future Starsに、ティエラポニカ社(※)が参加しました。
※ティエラポニカ社とは:ちとせグループとして2018年に設立した事業体。微生物の力を活用した養液栽培の技術を有する。https://chitose-bio.com/jp/business/tierraponica/

◯北村 玲雄奈(Tech & Biz Development Div. Manager):

10/9-12の4日間、UAE(ドバイ)で開催された中東最大の技術展示会GITEXFutureStarsに出展してまいりました。

我々は今年6月にもシンガポールの展示会Innovfestに出展してきましたが、前回と同様にJETRO現地事務所の協力のもと、宇宙開発やブロックチェーン関連等のスタートアップ企業約15社とともに日本パビリオンに選定され、4日間展示を行いました。

(左)UAEだけでなく、隣国のサウジアラビアやクウェート等からの引き合いも多く受けました、(右)Gitex Supernova Pitch Competitionにて登壇する筆者


ドバイやシンガポールといえば、「高層ビルが建ち並ぶ」、「金融、交通のハブ」、「農産物を輸入に依存している」など幾つも共通点がありますが、展示会で来場者と意見交換する中で、両都市における差異も感じました。

例えば、ドバイを含むUAEは発酵食品に規制があるハラルの食文化であるため、微生物が有機物を分解することで野菜の栄養源となる我々の栽培方法をすんなりと理解してもらうことに対してハードルを感じたり、サステナビリティやSDGsという概念が現地企業の中に浸透していないなど訴求の難しさを感じる点があった一方で、有機原料が野菜にもたらす”旨味成分”については非常に高い関心を集めました。

ちなみに、ドバイの街を歩いていると、至る所で機能性よりもデザイン性を優先した建物を目にします。こうした「見せる」ことへの優先順位の高さは、現地の人々(通称:エミラティ)と話していても強く感じます。聞くところによると、学校のカリキュラムの中で「表現/デザイン」という、発表や演劇を中心とした授業があるようで、彼らは小さい頃から「見せる」ということへの意識を醸成してきているのかと納得がいきました。

展示会の翌週には、ドバイのSustainable Cityやアブダビ近郊のMasdar City(2030年完成予定)を視察してきました。視察先では”循環”や”持続性”という観点での感動よりも、どうしても「見せ方」に感心させられることが多かったのも事実です。今後2020年のドバイ万博までは「見せる」側面が優先されていくと思われますが、その先を見据えたビジネスモデルを構築して、ティエラポニカの技術による高品質野菜を一人でも多くの方々に届けていきたいと考えております。

(左)在ドバイ日本国総領事主催の懇談会に出席、(右)学校、モスク、病院、ドーム型の温室、オフィス、商業施設、プール、馬小屋などが配備された約46haのスマートコミュニティ”The Sustainable City”

 

 

● 新しいメンバーを紹介します

タベルモ社に、新しいメンバーが加わりました!

K.Hamada(General Manager of Marketing Dept., Tabérumo Corporation)

ちとせグループでは数%しかいない文系です。
ちとせグループでは数%しかいない50代です。
ちとせグループでは数%しかいない九州人です。

そんな私が、株式会社タベルモへの参画を決めたのは、「化石燃料を基盤とした社会から、光合成を基盤とした社会の実現へ」を掲げつつ「事業構造から逆算した技術開発」を標榜するちとせグループの経営観に強く感銘を覚えたためです。
「藻を食べる(=タベルモ)文化を社会に根付かせる」ことをビジネス人生の集大成として選択しました。

少年時代は無類の昆虫好き・動物好きで、学校帰りは田んぼに直行してザリガニやゲンゴロウ取り、草むらを見つけては棒切れをたたきながらバッタ・コオロギ捕り、大きな石をひっくり返しては飼育しているカメのえさのミミズ捕りが日常でした。夏は夜中から山に登ってカブトムシ捕りで警官に補導されたり、捕りすぎた昆虫をデパートに売りに行き冷たくあしらわれたりして社会の構造を学んで来ました。
では、これまで自分は「藻」とどのうように関わってきたのか?
う~ん、バルコニーで飼っているメダカの睡蓮鉢に発生してくる藻がうっとうしくて、手ですくっては床に投げ捨てているくらいでしょうか。


あらためて藻の勉強を始めた私、水面に浮かび増えてくる藻を見る目が変わってきました。


編集後記

10月のとある週末、ふと思い立ち1日断食をしました。

断食の翌日、お気に入りのうどん屋さん(そば文化の関東で美味しいうどんを食べるのはなかなか難しいことなんだと実感していたのですが、先日ついに好みのうどん屋さんをみつけたんです!)で断食明け初の食事をしたのですが、注文して出てくるまでの待ち時間がまるで永遠のように感じられて、すごく辛かったです。笑

身体が浄化されるとか、痩せるとか、そういう効果はよくわからなかったけれど、「人生から食という楽しみを奪われるのは絶対に嫌だ!!」と強く強くつよーく実感。

これまでどちらかというと食に無頓着な方だったのですが、食という楽しみのこと、健康のこと、なんだか断食した日からより一層考えるようになったような気がします。

意識改革にはもってこいなので、食がおろそかになってると感じたら、また断食してみようかなと思いました。

 

次回のHOTTOPICSは12月上旬を予定しております。
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