前回は、拡大するためには整理と混沌のバランスを意識するのが大事だという話を書きました。
「仕事を進めること=整理を進めること」が一般常識とされている中で、藤田がそこそこの頻度で混沌が進むような意見を言ったり、わざわざ混沌が増すような指示をしたりすることに、新たにちとせに加わったメンバーが困っているのを見ると大変申し訳無い気持ちになります。
だからといって整理と混沌のバランスの取り方こそが、組織の拡大のための鍵であると私が信じている以上、現在の日本の常識である何事も整理が進むほど良いのだという考え方に自分を合わせるわけにもいきません。藤田がこのタイミングで混沌させるようなことを言う理由を何度も何度も説明するのですが「まーた藤田さんがわけわからないことを言っている」「せっかく一生懸命やってるのに認めてくれない」と余計困惑させてしまうことが多いので、そんな状態が少しでも和らぐと良いなと思い、前回の記事を書きました。
こうしてどんなに私なりに言葉と時間を尽くして説明しても、整理と混沌のバランスが大事なのだから整理ばかりしていても事業が広がっていかないのだということをなかなか理解してもらうことができません。その理由は、現代日本の価値観と異なるから以外にもいくつかあるのですが、そのうちの一つに、そもそも何を拡大したいのかが擦り合っていないという理由があるような気がしています。
私が広げたいのは個人の「意志」や「価値観」です。なにも藤田の「意志」や「価値観」だけを広げたいのではなく、そこには釘宮や笠原や堀内や星野だけでなく、今井や野本のような裏方の仕事をしているメンバーの「意志」や「価値観」も加わりますし、さらにそこには今や四〇〇人近いちとせグループに所属する一人一人の「意志」や「価値観」が加わります。さらにさらに、ちとせと資本提携したり業務提携していただく企業に所属する一人一人の「意志」もそこに加えて、世界に広げて千年先まで残したいと思っているのです。
関わった人たちの「意志」や「価値観」が広がれば広がるほど、様々な立場でそこに関わった個人に対して経済的にも恩返しができると私は信じています。資本主義って本質的にはそういうことでしょ?と思うのです。私は会社のCEOを名乗っている責任とプライドとして、ちとせに出資や業務委託をするという決断をしたり、自分の人生を賭してちとせに入社するという決断をした一人一人に「経済的にも得をした」と思って頂く方法を常に考えています。私が個人の「意志」や「価値観」を広げたいと何度も言っている理由は経済的な観点で考えてもその方が良いからと思っているからなのです。
今の日本は極めて高度に整理された社会です。その中にあるちとせのような小さな会社でも、皆が一生懸命働くほどその結果としてどんどん整理が進みます。しかし、私が広げたいのは個人の「意志」や「価値観」なのだから、整理と混沌のバランスが、過剰に整理に傾くのは、「意志」や「価値観」が広がらない状態になっている匂いがするぞと感じるのです。
せっかく積み上がった整理をぶっ壊すのは、いつも気が引けるし申し訳ない持ちになるのですが、それでも創業者兼CEOにしか壊せないバランスってあるよなと感じて、「また、藤田さんがわけわからんこと言ってるぞ。」ということを言うのです。
某ヒット曲の様に、♫積み上げたものぶっ壊してー♫遮るものはぶっ飛ばしてー♫と楽しげに勢いよくできれば良いのですが、生憎そういう楽しげな性格に人間ができていないので、毎回なんだか申し訳ないなぁと感じているんです。役割なのでやりますけどね。
#1:「広がる意思決定」と「縮まる意思決定」
#2:整理と混沌のバランス
#3:バランスを均一にしてはいけません
#4:積み上げたものぶっ壊して、遮るものはぶっ飛ばして
#5:意志や価値観を広げるということ