前編では、我々がなぜ藻類プロジェクトに取り組むのかを紹介した。

前編を簡単にまとめると、
・近い将来、食料や燃料が足りなくなる、
・その解決のためには光合成量を増やす必要がある、
・光合成量を増やすには藻が最適である
という内容だった。

では、具体的にどのような取り組みを行っているのか?
本稿では現在進行しているプロジェクトの中から、主に3つのプロジェクトを紹介する。

●前編:ちとせはなぜ藻類プロジェクトに取り組むのか
●中編:ちとせの藻類プロジェクト(←本記事)
●後編:ちとせの武器、3つの藻ヂカラ

 

藻類ジェット燃料プロジェクト

目的:エネルギー枯渇問題を解決する
具体的には?:藻で代替ジェット燃料を作る
藻の種類:ボツリオコッカス
事業体:株式会社ちとせ研究所
パートナー:NEDO、株式会社IHI、神戸大学
場所:鹿児島、タイ

株式会社IHIへ企画を持ち込み、2011年よりスタートした藻類ジェット燃料プロジェクト。2012年からは、 “国家プロジェクト”として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業としての開発を進めており、2013年にはIHI横浜事業所の屋上にて100㎡の屋外培養2015年には鹿児島にて1,500㎡スケールの屋外培養池での大規模培養を成功させた。

2015年に公開したバイオ燃料用微細藻類(ボツリオコッカス)の屋外大規模培養の様子

現在は、安定生産を目指し、開発してきた生産プロセスを用いて商用候補地タイでの10,000㎡のパイロットスケール実証試験の準備を行っている。

本プロジェクトに使用している藻は、「ボツリオコッカス」という緑藻類の一種。燃料に近い性質を持つ油を乾燥重量の半分程度蓄積することから、古くから燃料代替として期待されてきたが、「増殖スピードが非常に遅いこと」そして「大量培養技術が確立されていないこと」が大きな懸念点であった。

そこで本プロジェクトでは、神戸大学が開発した「高速増殖型ボツリオコッカス」という、通常のボツリオコッカスに比べて増殖スピードの速い藻をベースに、低コスト・大量培養を実現するための品種改良を行なうと同時に、大量培養技術の確立を目指している。

藻類自体の生産性の向上を目指したラボでの研究開発も継続しているが、各地の屋外で行なう試験の比率が年々増えているためなかなかプロジェクトメンバーが一同に集まることがない。メンバー全員が集まる写真を探したところ、2017年6月のちとせグループキックオフミーティング時の写真しか手元になかった。一部メンバー入れ替えはあるが、だいたいこんなメンバーだ。

 

現在の課題は製造コスト。まだまだ「燃料」として手の届く価格ではないのが現実だ。だが、技術開発を進め、課題をひとつひとつクリアし、着実に目標に近づいている。

今後も太陽光のみで育てるというポリシーを決して曲げること無く、果敢に挑み続けてゆく。

タベルモプロジェクト

目的:食糧問題(タンパク質クライシス)を解決する
具体的には?:藻を、大豆や肉の代わりとなるタンパク質源として供給する
藻の種類:スピルリナ
事業体:株式会社タベルモ(メイン)、株式会社ちとせ研究所
パートナー:株式会社産業革新機構、三菱商事株式会社
場所:静岡県掛川市、ブルネイ

栄養の種類・バランス・消化吸収効率が高く、タンパク質が豊富なスピルリナ。一般的には粉末や錠剤などのサプリメントとして販売されているが、豊富な栄養をそのまま摂れる「食材」として普及させることを目的に「生」での製品化に2013年より着手した。

一般的なスピルリナの培養方法では生食に適さないため、ハウスなどの環境づくりと同時に、独自の培地を開発し工夫を重ねることで生食に適した培養方法を構築。静岡県掛川市で培養したスピルリナを2015年より生スピルリナ「タベルモ」というブランドで販売している。

新商品のフローズンデザートを販売したり、各種イベントへ出展したりと、メンバー総出で認知を広めるために活動してきた。商品開発にイベントの運営、POPやチラシやイベントブースのデザインにWEBサイトづくり、メディアの運営など、スキルが増えて成長してゆくメンバーが実にたくましい。

 

スピルリナをタンパク質源として広く活用していくことを考えると、現時点では生産コストがまだまだ高い。そのため、さらなる技術開発を行いつつより太陽光の多い場所にて培養することで生産性を上げて製造コストを下げ、来たるタンパク質危機(タンパク質クライシス)に備えた商品展開を進めてゆく。

[2018.8.27追記]
2018年5月22日、本プロジェクトの事業体である株式会社タベルモは、株式会社産業革新機構と三菱商事株式会社より17億円の資金調達実施の発表をした。調達資金でブルネイに工場を建設し、タンパク質危機の解決に向けた事業展開を加速してゆく。
より詳しくは以下の記事を御覧ください。
17億円の資金調達を実施したタベルモ社の目指す未来とは?
Hottopics vol.51(7月号) ←「●タベルモ増資の発表を行いました」参照

[参考]
◯タンパク質危機(タンパク質クライシス)について詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ
タンパク質危機
◯藻の食品利用について詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ
食品分野における藻類の利用 -可能性と課題-

 

サラワク州マイクロアルジェプロジェクト

目的:東南アジアの藻類資源を活かす
具体的には?:多様な現地藻類の資源化、および資源を活用した収益性の見込まれる事業展開
藻の種類:様々な藻
事業体:Chitose Agri Laboratory Sdn. Bhd.、株式会社ちとせ研究所
場所:マレーシア サラワク州
※本プロジェクトの主体はSarawak Biodiversity Centreと三菱商事株式会社。ちとせは三菱商事から技術コンサル業務を受託するという形でプロジェクトに携わっている。

マレーシアの研究機関であるサラワク州立生物多様性センター*(Sarawak Biodiversity Centre, SBC)と三菱商事により2012年10月に開始された、現地の有用な藻類の収集&実用化を目指したプロジェクト。ちとせは三菱商事から技術コンサルタント業務を依頼され、2013年より現場におけるプロジェクト運営やSBC研究員への技術指導を行っている。

*100名程の研究員を抱えるマレーシア サラワク州の研究機関。生物多様性の保護および活用を目的とし、本プロジェクト以外にも、新規生理活性化合物の探索や、植物抽出物を用いた商品開発など、様々なことに取組んでいる。

※尾張の藻ガール感満載の記事はこちら

ちとせの研究員は長年現地に駐在し、SBCの研究員と共に藻のサンプリングから観察、培養、採取した藻の事業性の検討などを主導している。こうしたプロジェクトにおいて、現地研究員との信頼関係の構築はとても大切。これまで現地に駐在してきたちとせメンバーは皆、現地研究員との良好な関係を築いてくれて実に頼もしい。こうして構築された良好な関係、資源、技術を基に、プロジェクト主体者であるSBCと三菱商事の両者と共に、現在も技術・事業開発を継続中である。

SBC&三菱商事のメンバーと

現在、採取した藻の商業化に向け、ちとせ独自の設計&デザインのPBR(フォトバイオリアクター)での大規模実証試験を実施中だ。安価で高い生産性を実現する設備、現地生物資源の活用、現地研究員の技術向上、国境・分野を越えた人間・信頼関係の構築、これらを踏まえた収益性の高い事業開発の今後に期待して欲しい。

 

また、ちとせでは今回紹介した以外にも、某製造系メーカーの藻類プロジェクトのお手伝いや、国内や東南アジアで準備中の新たなプロジェクトなど、ちとせでは多数の藻類プロジェクトが動いている。

後編:ちとせの武器、3つの藻ヂカラ」では、今回紹介した3つのプロジェクトを例に出しながら、我々が藻類プロジェクトに取り組む上で武器としている『ちとせの3つの藻ヂカラ』について紹介する。