我々ちとせグループは、東南アジアの中でも特にマレーシアには随分とお世話になっています。

実は現在11社ある事業体のうち、ちとせ研究所の次に設立(2012年)したのはマレーシア法人「Chitose Agri Laboratory Sdn. Bhd.(通称CAL)」。CALでは、環境配慮型の農業でいちごやトマトを生産したり、パームプランテーションの廃液を微生物とウキクサを活用して浄化したりといった活動を行っています。
自社農園を通じて、東南アジアに環境持続型農業(千年農業)を根ざす
有機性廃水を浄化する微生物と植物がパーム産業を刷新する
農業廃棄物を微生物資材に変え、東南アジアの土壌菌叢を豊かにする

ちとせがマレーシアに着目して現地で活動している理由は、マレーシアは赤道付近の熱帯地域に位置することから温暖な気候、豊富な日射量淡水資源及び広大な平坦地を有し、同国を将来的なバイオマスの供給国として注目しているから。現在既に行っているいちごやトマトの生産、パームプランテーションの廃水処理のみならず、今後、藻類バイオマス産業、特にバイオマスの一次生産拠点としてマレーシアは非常に重要なポジションとなる国だと考えています。

そこで先月、バイオマス産業の舞台としてのマレーシアをリアルに体感いただくことを目的に3日間の視察を企画しました。視察の企画など初めての経験で不慣れなことも多く急なご案内となってしまったにも関わらず、日本からは約40名の方々に、マレーシア側の参加者も含めると総勢80名の方々にご参加いただき、無事大盛況のうちに終えることができました。

<参加者の感想>

✔アジアにおける藻の商業活動を目と肌で体験したのは初めてで、こういう機会もちとせグループだから出来たことだと思う

✔マレーシアの現状をほとんど何も分からない人間が訪問して、ここまで現状と将来性、その魅力や課題などが実感できる機会はほかには無い

✔東南アジアでのバイオビジネスにおいて、ちとせグループが有する産官学との連携・幅広いコネクションに驚いた

✔養殖産業、パーム産業だけでなく大学などの研究機関とのネットワークをマレーシア国内に形成し、マレーシアで事業化を推進する体制が作り上げられてきているなと大変関心した

✔現地のニーズをきちんと把握し、それに応える技術開発から事業化までのスピード感、そして現地の行政や研究機関を巻き込む展開力に感銘を受けた

✔社長のリーダーシップと社員皆様方の強い熱意と能力を感じる組織で、バイオ産業の将来を切り拓く期待を感じさせる会社だと感じた

✔日本の一般企業より構成人員が若いようだが、一人一人に意思決定権がありスピード感を感じた

ここから、ツアーの内容をダイジェストでお届けします。


■イベント1:藻類培養プラント開所式 @Sarawak Biodiversity Centre(SBC)

ちとせグループが設計・監修した熱帯環境下における世界最大級の藻類培養設備の開所式が、8月27日(火)にマレーシアのサラワク州クチンにてSBCと三菱商事の共催により開催されました。

藻類培養設備に関して詳しくは、以下のプレスリリース参照
▷[プレスリリース]低コストで大規模化可能な3次元型の藻類培養設備を開発

マレーシアの中でも独自の文化が色濃く残り、1つの国に近い形態をとるサラワク州が、州政府をあげて藻の事業に取り組んでいこうとする姿勢を、盛大に開催された開所式で目の当たりにすることができました。

総勢600名以上もの方が参加

アバン・ジョハリ州首相が登壇している様子。州首相以外に、副首相やSBCの会長、三菱商事 執行役員の太田氏などが挨拶した。左手前はちとせグループの藤田。

Seahorse Corporation、SBC、三菱商事、ちとせグループの4社にてMOUの締結を行った。詳しくはこちら

藻類培養設備の前で記念撮影。州政府の要人の皆さんの「できるだけ州首相の隣で写真に収まりたい」という強い動機に押し出されて、藤田は後ろになってしまったらしい。

MOUを記念した動画が、以下にて紹介されています。

1,000平米の培養設備に関する話題や開所式当日の様子が、多くのメディアで報道されました。

◯Forbes
世界の長者番付発表で知られる世界有力経済紙にて、SBCの活動紹介の中で取り上げられた
https://www.forbes.com/sites/johncumbers/2019/09/12/there-is-more-money-in-the-borneo-rainforests-biodiversity-than-in-the-deforestation-of-it/#431caecd337f

◯Algae World News
サイエンスからビジネスまで世界中の藻類情報が集約するメディア
https://news.algaeworld.org/2019/08/open-demonstration-with-one-of-the-world-largest-algae-production-facilities-under-tropical-outdoor-environment/

◯マイナビニュース
こちらは日本語の記事。培養設備の話を中心に取り上げてもらった
https://news.mynavi.jp/article/20190826-868601/

◯NNA Business News
世界の人が日本企業のアジア動向をチェックする共同通信のメディア
https://www.nna.jp/english_contents/news/show/20190821_0007

◯Biofuels Digest
バイオ燃料業界でもちとせPBRには注目が集まっている
https://www.biofuelsdigest.com/bdigest/2019/08/20/japanese-biotech-group-launches-largest-tropical-microalga-facility-in-malaysia/

◯BORNEO POST
この地域で最も権威ある新聞社では題材的に取り上げてもらった
https://www.theborneopost.com/2019/08/28/huge-allocation-slated-for-rd-in-sarawak-under-12mp-cm/

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Sarawak Biodiversity Centre(SBC)について
• サワラク州の生物多様性を継続的に保全、活用することを目的に設立された州立研究所。
• 三菱商事との共同研究が行われている。
• 2012年~ちとせグループは微細藻類種の「実用化」に向けた「技術」アドバイザーとして参画。
• 機能性食品や色素、飼料に商用化が期待される株を含む約700種の藻類を保管。
• サラワク州にてバイオ工業団地構想を推進している。
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イベント2:エビの養殖場見学 @Seahorse Corporation Sdn. Bhd.

藻類培養プラントで培養した藻類を、エビの飼料用途、水質浄化用途として大規模に試験的商業利用している現場を見てもらいました。

養殖池1つのサイズは5,000 or 6,000平米。彼らが所有している池の数は200以上にものぼる。現在はいくつかの池で我々の培養した藻を稚エビの餌として与える試験を行っているが、半年以内には100以上の池での試験へと拡大する予定。つまり、約2億匹の稚エビの生産に我々の藻を活用することとなる。

稚エビ放出の様子。養殖池1つあたり、30万〜48万ものエビがいる。計算すると1平米あたり60-80匹ものエビがひしめき合っている計算に。想像すると・・・ちょっと恐ろしい。

日本のスーパーでもおなじみ、ブラックタイガー(学名Penaeus monodon)。みんなが、モノドン、モノドンと言っているので、なんのことかと思ったら、エビのことだった。

とれたてのエビを茹でたものを一人10尾以上も昼食でいただいた。口に入れた瞬間ほのかに甘いうまみが溢れ出し、ジューシーかつ身の詰まったエビは、日本では口にできないほど美味しく、大好評だった。

シーホースの様子は、以下のMOUの動画にて詳しくご覧いただけます。
https://www.facebook.com/watch/?v=374248999895856

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Seahorse Corporation Sdn. Bhd.について
• エビの孵化、養殖、加工までを行う、マレーシア、サラワク州の企業。エビへ抗生剤等薬物投与や、海水の化学処理等を一切行わず、オーガニックのエビ生産を行う。サラワク州内数か所に、200ha以上の養殖池を有する。
• 2012-2013以降、EMS (Early Mortality Syndrome) 等の病害拡大により、世界中でエビ養殖が大きな被 害を受けている。SC社・SBC・三菱商事とちとせグループは共同による、現場での大規模試験を実施。環境負荷の高い抗生剤等の薬剤処理ではなく、飼料開発・水質浄化といった藻類の応用が行われている。
• 商業規模エビ養殖池での試験に関する報告は、現在非常に限られている。
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参考)水産分野における藻類の利用 -現状と将来性-

■バイオマス産業セミナー with University of Malaya

藻類の世界的権威だけでなく、マレーシア官民の主要プレーヤーが、これからのバイオマス産業をリードする藻類バイオマス産業について語りました。マレーシアのアカデミアを取り巻く人材のレベルの高さと本気度を実感していただく機会となりました。

参加者は総勢80名以上にのぼり、Sime Darby(世界最大規模のパームオイル栽培面積を保有)の最高研究開発責任者や、バイオエコノミーコーポレーション(農林水産省の管理下にあるマレーシアバイオ産業開発機関)の副社長、Sustainable Energy Development Authority(持続可能エネルギー開発庁)の副部長、Universiti Teknologi Malaysiaの海洋技術センターのセンター長、Roundtable on Sustainable Biomaterials(東南アジア諸国連合グリーン商工会議所)のチェアマンなど、錚々たる方々にもご列席いただきました。

◯講演者:
・Dr. Phang Siew Moi
Institute of Ocean and Earth Sciences Deputy Vice Chancellor
マラヤ大学教授でマレーシアの藻類研究のパイオニア、藻類研究の世界的権威。今年の10月12日には、法的・国際的に認められた栄誉称号である「Emeritus(名誉教授)」の称号が贈られる予定。

・Dr. Liew Kan Ern
CEO of Aerospace Malaysia Innovation Centre
AirbusのHead of Technologyでもある。エアバスやロールスロイス、マレーシア政府等の大きな後ろ盾を持ったマレーシア航空業界の主要人物。アカデミアだけではなく、実用の観点からもバイオ航空燃料に非常に詳しい。

・Mr. Vinesh Sinha
Founder and CEO of FatHopes Energy
マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、ピザハット等から食用廃油を戦略的に回収し、バイオディーゼルを生産・販売する会社の代表。2018年Forbesの”30 under 30 – Asia – Industry, Manufacturing & Energy”に選ばれている。

・Dr. Tomohiro Fujita
Founder and CEO of CHITOSE GROUP
ちとせグループ代表。日本のバイオ戦略の有識者でもある。(正式名称:内閣官房 イノベーション政策強化推進のための有識者会議 バイオ戦略 有識者)

同時通訳が追いつけないほどのスピードで話す藤田

マレーシアの海洋研の偉い人の質問に対して、I have 3 points which I want to tell. と話し始めたにもかかわらず、3つめの中身を忘れた藤田。懇親会の時に、「3つ目忘れましたって演出、すごくクールだったよ!日本人最高だね(byマレーシアの化粧品ベンチャー社長)」と言われて、「本当に忘れたのに、日本人クールってブランドって凄いんだな。」と感じたとのこと。

集合写真。時間がおしたことから急遽一部スケジュール変更などあり、てんてこ舞いになりつつも、無事に大盛況で終えることができた。

■パーム産業複合施設見学 @Sime Darby

バイオマス産業の規模感を実感してもらうべく、世界最大規模のパームオイル栽培面積を誇るマレーシア最大のパーム会社が運営するパームプランテーションへ。これ以上環境問題で叩かれないようにするための必死さを実感いただきました。

ずーっと向こうまで続くパーム。このプランテーションの総面積は11,000ha。

案内してくれたSime DarbyのEzzaruddin Abdul Rapaさん(Manager, Special Project Upstream Malaysia, Sime Darby Plantation Berhad, Sime Darby Plantation Academy)

丸4年、マレーシア サバ州の山奥のパームプランテーションに住み込んでいたこともあり、おそらく日本で一番パーム産業に詳しい男、小池(右)が解説中。

パームの実はかじると油が染み出す

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Sime Darbyについて
• Carey Islandに11,000 ha以上の土地を有し、パーム農園、数か所のオイルミル、バイオディーゼル プラント、パーム核殻破砕設備、パーム核油精製設備、研究開発センターを同地に有する。 クアラルンプール郊外では最大級のパーム油産業複合設備。
• 2006年以降、60,000mt のバイオディーゼルプラントがCarey Islandで稼働開始。
• また、2017年以降、MMC Port HoldingsやSime Darby Propertyを中心に同地で大規模な港湾開発の計画が進んでいる。
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少しでも多くの皆さんに、マレーシアにおけるバイオマス産業の規模感や熱量を体験してもらいたい!と思い立ったことから本視察の企画が始まり、メンバー総出で突っ走った1ヶ月半でした。

準備を始めて見ると、上から下まで理系集団でしかないちとせにとっては想像以上に重たい仕事でした。実際に様々な手配の不具合などありました。にもかかわらず、そのたびに笑って受け入れていただいた参加者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。

<参加者の感想>

✔今後の発展が望まれる東南アジア、特に成長性と現状の発展度のバランスの良いマレーシアに注力している点は慧眼だと感じた。

✔マレーシアでの事業だけでなく、国内外で積極的にバイオ産業を活気づけようという強い意志を感じた。今後の日本発バイオ産業の将来を決定づける可能性のある企業だと思う。

✔国内でバイオマス産業を拡大するには限界があるということにいち早く着目した点と、東南アジア現地に積極的に出向いて現地の人との信頼関係を構築している点で、他の国内バイオベンチャーをリードしているなと感じた。

上記のように、参加者の皆様からは嬉しい声を本当にたくさんいただき、バイオマス産業を興す現場としてマレーシアがいかに最適かという点と我々の本気度合いが皆様に伝わったのだなということが実感できました。参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。我々は今後もマレーシアで、藻類を活用したビジネスはもちろんのこと、農業・パームプランテーションを持続可能な形へと変えるべく活動してまいります。

最後は、今回のマレーシア視察の責任者であり、且つ大規模な(1,000ha!?)藻類培養を実現することを目標に掲げている星野の言葉で締めます。

◯星野 孝仁(藻類活用本部 本部長)

東南アジア、特にマレーシアに足しげく通うようになって早4年。あっという間です。

その間、日本から視察に訪れた方々に現地の方と間違われ英語で話しかけられてしまう程に現場に入り込んでしっかりプロジェクトを回し続けてくれるちとせのメンバーや、我々の東南アジアでの活動を仕事でもプライベートでも応援して下さる国内外の皆さま、そうした活動全てを舞台裏からしっかりサポートして下さる方々など、本当に多くの方の助力があった上で、少しずつ目標に向かって前進することができました。

現場に入り込んでプロジェクトを回してくれているホセ、遠藤、松崎(開所式にて)

今回の視察では、そういった多くの方々の熱量を体感して頂くことができたのではないかと思います。こうした方々と共に、そしてこれから共に歩んで応援して下さる方々と共に、自分の目で1000haの藻類生産拠点の完成を見れるよう今後も邁進していく所存です。多くの方が喜んで巻き込まれていく世界を実現できるよう、今後も応援よろしくお願いいたします。

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