「共感覚」というものがある。音を聞いて色が見えたり、色に香りを感じたり、ある刺激に対して別の感覚が同時に生じる知覚現象のことを指す。

私は心や頭に刺激を受けると、勝手に脳内で音楽が流れたり、テロップが視界に表れたりする癖がある。MATSURIのイベントでは、高頻度で私の「共感覚もどき」が発動する。

「MATSURIオープン・デー in 東京大学」は、バイオエコノミーの最前線を走る11社と1団体が集結し、次世代人材に向けて開催された。イベントでは、環境課題やサステナビリティというテーマに興味関心がある若手人材に向けキャリア観を整理するきっかけを提示した。

会場でキーパーソンの講演を聴き、12のブースを回り、参加者たちと言葉を交わすなかで、私は何度も揺さぶられた。そして、気づくと私の脳内には「ニッポンの未来は…」と明るい音楽が流れていた・・・笑

「あんたにゃもったいない♪」とか言わずに当日の熱気をお届けしたい。

目次

「MATSURIオープン・デー in 東京大学」・・・ちとせグループがMATSURI参画機関と共に実施したサステナビリティに特化した業界研究イベント。第一部の講演会と、第二部の企業ブース訪問から構成され、来場者が産業界の最新の取り組みやキャリア観に触れる機会を提供した。
出展者:ちとせグループ/日本ガイシ/資生堂/花王/日本製鉄/三井住友銀行/日本特殊陶業/武蔵塗料/レゾナック/築野グループ/ソニー/東京大学 One Earth Guardians育成機構

第1部 講演・出展企業紹介

「事業化」という言葉は気軽に使えなくなる 研究と事業と産業の関係

藤田の話は、いつも「ものの見方」を一段引き上げてくれる。今回語られたのは、事業化の先にある「産業」という視点を欠いていては、本当の意味で社会は変わらないのではないかという問題提起だった。

「科学・技術・事業・社会」という4つの領域を頭に思い浮かべたとき、多くの人は科学を始点に考える。しかし本来の出発点は、その逆の「社会」であるはずだと藤田は指摘する。 あるべき社会像を描き、どんな事業でそれを叶えられるのか、そこに必要な技術や科学は?これが藤田が重視する社会起点の思考だ。

また「事業とは、人の営みであり、営みとは社会に価値が回ること」だと藤田は語る。一方で、社会に何の価値も回さない“事業のようで事業でないもの”が「グリーンテクノロジー」などともてはやされ、巨額の資金が流れ込んでいる現状があると警鐘をならす。

社会をよい方向へ導くのは、科学や技術では足りない。ましてや誰かの善意や我慢の上では成り立たない。「よい事業をつくる人が、きちんと儲かること」で、事業は持続的に拡大し、社会を動かすうねりとなる。しかし、その前提を一社だけで整えることはできない。儲かる前提が成り立つ社会構造そのものをつくる必要がある。だからこそMATSURIは「事業」をつくるのではなく「産業」をつくっている。

それは、こう言い換えることもできる。「よい事業は、儲からねばならない」

この講演に、私はちとせの矜持を見た。

One Earth Guardians:バイオものづくりにおける産学協創と教育の新しい形

次に登壇した東京大学 五十嵐圭日子教授(総長特任補佐/大学院農学生命科学研究科 副研究科長)は、祭(MATSURI)にあわせて自身が関わるOne Earth Guardians育成プログラムの法被を身にまとって壇上に現れた。

まず冒頭で示したのは「アース・オーバーシュート・デー」という考え方だ。地球が1年間に生み出す資源を、1月1日から数えて人類が使い果たしてしまう日のことを指す。2025年は7月24日だった。つまり、現在私たちは地球1.8個分の負荷を前提に暮らしていることになる。

そんな現状に対して、五十嵐教授はシンプルな問いを投げかけた。
「地球は、いくつありますか?」

地球は一つしかない。だからこそ、五十嵐教授は技術への過度な期待に慎重だ。新しい技術や物質が見つかっても、それが地球規模で意味を持つまでには、途方もない時間がかかる。

研究者としてその現実を知っているからこそ、五十嵐教授が最も力を入れているのが人を育てることだ。「地球は二つない」という前提に立ち、科学的に考え、判断できる若者を増やすこと。その思想を形にしたのが「One Earth Guardians(地球医)」を育成する東京大学の教育・研究プログラムだ。

五十嵐教授の講演は、環境課題や技術を「点」として語るものではく、それらをどう横につなぎ、時間軸の中で育てていくのかを示すものだった。これからの時代を生きる私たちに、三次元的な視点を与えてくれた。

わたしたちが見つめる未来 Beauty&Sustainability

資生堂 小口希氏(ブランド価値開発研究所グループマネージャー)の講演は、問いかけから始まった。

「ここに2つの値段が異なるシャンプーがあるとします。品質・使用感は全く同じ。しかし高い方は、製造時のCO₂排出量を削減している。さて、あなたはどちらを選びますか?」

環境に配慮した選択が望ましいことは、多くの人が理解している。しかし、価格差という現実を前に、その選択は簡単ではない。小口氏は、企業研究員として自らが向き合う日々の葛藤を共有し、聴き手にとっても手触りを伴った問題を投げかけた。

資生堂の「至哉坤元 万物資生※」という企業理念のもと、化粧品という枠を超えて「産業をつくる」という大きな構想の中で、さらに本質的な変化が起こせると小口氏は考える。

※大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか。すべてのものは、ここから生まれる。

その構想は、2025年、万博日本館でひとつの実を結んだ。MATSURIで生まれた藻類由来のスキンケア化粧品プロトタイプ「美の玉 しずく」「美の玉 まがたま」の公開である。このとき資生堂は、自社だけが使える独自原料ではなく、業界全体で使われうる汎用的な原料を選んだ。サステナビリティにおいて、オリジナリティよりも、社会に広がることが価値になりうるという判断だ。

ここに、小口氏の強くたくましい姿勢が表れている。「資生堂『が』藻類由来の化粧品をつくる」ことがゴールではない。「資生堂『から』藻類由来の化粧品を作り始める」そして産業として社会に渡していく。資生堂は、そのための第一歩を誰よりも早く踏み出す覚悟だ。

https://www.shiseidocreative.com/bi-no-tama-vision-product

第2部 企業ブース交流 

「当事者」の熱に触れ、君たちは何を思うか

2部で行われたのは、よくある「企業説明」ではない。ブースで参加者を待ち構えたのは、人事担当者ではなく、各社でサステナビリティやMATSURIを推進する現場の研究員や、事業開発の現場メンバーたちだ。

自らの生業としてサステナビリティを背負う大人たちの本気に触れ、参加者たちの内で輝く好奇心がその両目から透けて見えるようだった。そしてまた彼らの感性に応えるように、各社の担当者も熱心に声を枯らした。

情報が溢れるこの時代、効率よく知識を得る方法はいくらでもある。しかし自分で足を運び、誰に会い、何を尋ね、どう感じるか。そのプロセスこそが何物にも代えがたい腹落ち感を生む。体温を伴う言葉のやり取りを通して、参加者それぞれの中でキャリア観や事業観が焦点を結んでいくようだった。

「研究が好き、技術で社会に貢献したい、でも何から始めたら良いのか分からない」そんな葛藤や、社会への疑念・反発さえも莫大なエネルギーに変えてしまう若者世代に、本気で未来を創ろうとする大人たちの姿はどう映っただろうか。

世界がうらやむ、MATSURIで踊れ!

イベント終盤、人々の表情や聞こえてくる会話からなんだかほくほくした気持ちになり「共感覚もどき」がまたここで呼び起こされた。(ニッポンの未来は wow wow ~♪ )そういえばどんな歌だったかしらと『LOVEマシーン』をちゃんと聴き直して衝撃を受けた。


ニッポンの未来は Wow Wow Wow Wow
世界がうらやむ Yeah Yeah Yeah Yeah
みんなも社長さんも Dance! Dancin’ all of the night!

なんということだ。

モー娘。は「MATSURI」について歌っていたのだった・・・!
さあ、あなたも法被を羽織って Dance! Dancin’ all of the night!


「MATSURIオープン・デー in 東京大学」概要
日時:2025年11月25日(火)13:00~17:30
内容:第1部 講演および出展企業紹介/第2部 企業ブース交流
講演者:ちとせグループCEO藤田朋宏/東京大学教授 総長特任補佐 大学院農学生命科学研究科 副研究科長 五十嵐圭日子氏/株式会社資生堂 ブランド価値開発研究所グループマネージャー 小口希氏
主催:ちとせグループ
協力:東京大学 One Earth Guardians 育成機構

関連情報
[プレスリリース] 11/25 開催!業界研究イベント「MATSURIオープン・デー in 東京大学」 ―バイオエコノミー構築の最前線を目撃せよ― 
[ニュース] 第2回 業界研究イベント「MATSURIオープン・デー in 東京大学」を開催いたしました