左:チーズ!出発しましょう!右:フェリーに乗りながら大崎上島の地図を調べる受講者

朝の10時に参加者全員が広島空港に集まり、早い便を取ったので、少し眠そうな目つきでも、元気で挨拶をし、バスに乗りました。当日のゴールは大崎上島です!最も近い本市の竹原市からフェリーで30分ぐらいの瀬戸内海に浮かぶ人口7,915人の離島です。

自然豊かで穏やかな田舎町だな〜と思われるでしょう?

実際、その離島では、未来をより身近に感じさせる生き生きとした仕事が、日々着実に進められています。大崎上島は、NEDOのカーボンリサイクル実証研究の拠点として重要な役割を果たしています。

日本は、2050年にカーボンニュートラルを達成することを目標に、2030年度までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目指しています※1。この目標を達成するためには、産学官の連携や新しいアイデアが必要です。そのため、カーボンリサイクル実証研究拠点は、さまざまなプレイヤーが集まる重要な拠点となっています。

※1 「第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組」
詳細はこちら:[外部] カーボンリサイクル実証研究拠点の研究テーマについて

カーボンリサイクルに微細藻類がどのように関わっているのかを知りたくて、参加者たちのワクワクした気持ちは、バスの運転手さんにも伝染してしまったようで、笑われてしまったほどです!

まずは、IMAT(一般社団法人日本微細藻類技術協会)の事務局長で、ちとせ研究所からの出向社員でもある野村さんから、当地で行われている研究について教えていただきました。カーボンリサイクル実証研究拠点では、微細藻類に関連する研究の目標を大きく分けると、以下の三つのポイントに整理できます:

  • 微細藻類由来SAF(持続可能な航空燃料)の製造に係る研究開発
  • 微細藻類によるCO₂固定化と有用化学品生産に関する研究開発
  • CO₂の高効率利用が可能な藻類バイオマス生産と利用技術の開発

微細藻類の種類によって生成される成分の割合が異なるため、適切な培養方法が欠かせません。IMATでは、上流から下流まで包括的に扱う研究が進められており、培養の標準化から成分抽出の技術開発に至るまで、各ステップにおけるデザイン、遺伝子改変、分析、アセスメント、そして外部との連携が求められています。

藻類培養に主に使用されているのは、以下の写真に写っている不思議な設備です。参加者たちは培養室に入った瞬間、「あっ!」と驚きの声を上げました。チューブ型PBR(フォトバイオリアクター)では、無数の流れ星のようにクラミドモナスが高速で流れ、その光景はまるで異世界の風景のようでした。

微細藻類の生産施設:(左から右へ)チューブ型PBR、フラットパネル型 PBR、オープンポンド型PBR

チューブ型PBRのほかにも、上記の写真に見られるようなフラットパネル型PBR(C4でも使用されているもの)やオープンポンド型PBRが活用されています。これらのPBRは、それぞれ生産コスト、生産性、コンタミネーション(汚染)のリスクなどに違いがあります。たとえば、オープンポンドPBRは運用コストが最も低い一方で、空気と接触する面積が広いため、細菌やカビのコンタミネーションリスクが高まり、藻類の増殖速度が遅くなるという課題があります。このため、食用微細藻類の生産には、オープンポンドPBRの使用は適さない場合が多いと言えます。

ゲノム改変の研究はここの部屋で。IMATの野村さん(左)の説明を聞きしながら活発にメモを取っている受講者たち

IMATの研究者は、微細藻類を生産用PBRに投入する前に、ゲノム編集を行うことで増殖速度や生産性の改善を図っています。研究室には、黄色から濃い緑まで、さまざまな色をした液体が入った容器が整然と並び、一般の人に取っては発音が難しい学名(Chlamydomonas reinhardii!!)を持っているクラミドモナスやスピルリナなどの成長が早い株がチューブで送り込まれるCO2を吸収しています。

微細藻類の種類によって生産性は異なりますが、一般的に20リットルの液体から約100グラムのバイオマスを収穫することができます。また、IMATでは、収穫されたバイオマスの精製や成分抽出のための高度な技術も開発されており、抽出された脂質やタンパク質などの成分は、バイオ燃料、飼料、色素、化粧品原料など、幅広い用途に活用するポテンシャルがあります。


フィールドワークの参加者(Day1)

IMATを出るまでに微細藻類は持続可能な資源として社会に貢献するための重要な材料となっていることを理解できたでしょう!見学の最後に写真を撮りました。

みなさん、チーズ!

でも、まだ終わりじゃないです。バスに乗って、大崎上島のサステイナブル取り組みのツアーを続けましょう。

To be continued…