生き物たちの力を借りて豊かな未来をつくるバイオベンチャー企業群、ちとせグループ。このシリーズでは、企業という有機体を構成するひとつひとつの細胞である「ひと」にフォーカスを当て、ちとせの全体像を描いていきます。

江口知輝(えぐちかずき)
Tech & Biz Development Div. 所属/2022年4月入社
東京農業大学大学院 農学研究科 バイオサイエンス専攻

 

ちとせ研究所にて、藻類事業を担当。マレーシアサラワク州の世界最大規模の微細藻類生産設備、CHITOSE Carbon Capture Central (C4) の立ち上げ要員として入社2ヶ月でサラワクの藻類チームにジョイン。現地マレーシア人メンバーとも協力しながら、技術開発、設備構築の運用、パートナー企業との共同研究を担う。入社2年目の現在は、本格稼働の始まったMATSURIプロジェクトに従事しながら、新しい産業構築というロマンに向かってひた走る。

 

1日の流れ
4:00AM 起床、身支度、その日の作戦を立てる
7:00AM アパート出発
8:00AM C4に到着、培養の作業や現地の研究員のマネジメント業務
5:00PM C4での勤務終了
6:00PM 帰宅、夕食や入浴
8:00PM デスクワーク
10:00PM 就寝

肉眼には見えないもので、世界を変える。

大学では分子生物学を専攻し、特定の領域に存在するタンパク質や色素のメカニズムを調べていました。実はちとせに入るまで藻類にはほとんど触れたことはなく、入社後は日本で2ヶ月ほど藻類の培養の基礎を叩き込まれ、気が付いたらあっという間にサラワクのチームにジョインしていました。

2022年6月に初めて施設に足を踏み入れたときは、施設完成まで道半ばではありつつも、5haという圧倒的な規模感に衝撃を受けました。2ヶ月間みっちり藻類に向き合ったとはいえ、研究室で見ていた規模とサラワクで実際に目にするその規模感は当然桁違い。想像を超える広大な土地に設置されるPBR(※)を眼前に、肉眼ではほとんど見えない小さなもので、これから本当に世界を変えるのだという実感がリアルなものになりました。

※フォトバイオリアクター。バイオリアクターを使った閉鎖系培養法で、フィルムを用いて立体的に微細藻類を培養する技術のこと。

悩んでいる暇はない。がむしゃらに動き続けるのみ。

その規模感に圧倒されたとは言いながらも、実は当時C4はまだまだ完成とは言える状態ではなく、しかも開所式は数ヶ月後に迫っていました。先輩方は焦りもあったのでしょうが、入社したての自分は何の先入観もなく、わき目もふらずやれば間に合うのだろうと素直に受け止めていたというのが正直なところです。

そのときから今日に至るまで、あまり悩んでいる暇はなく、トライアンドエラーを重ねながらがむしゃらに走り続けています。簡単ではない日々ですが、仕事自体が楽しいので忙殺されてしまうようなことはありません。志を持って働いている人が多いからか、チームでも「忙しい」などと弱音を吐くことはあまりなく、職場以外でも楽しく仕事の話をしています。


英語を使って働く。

そんな中でも、現地メンバーとの英語でのコミュニケーションには苦戦しています。これまでの1年は、私からの指示は比較的シンプルで、相手には自分が動いて見せればよく、いわばサバイバルイングリッシュでなんとかやりくりしてきました。最近はこちらが伝えたい内容も少しずつ高度になってきており、複雑なことを言えるよう文法なども詰めていかないといけないと感じています。海外に来たからと言って自動的に英語ができるようになるわけではなく、日本にいるときと同じような地道な勉強が必要です。

また英語という言語障壁に加え、当然お互いの意見そのものが衝突することもあります。基本的に指示を出すのはこちらですが、ときには相手が正しい場合もあり、一方的にならないよう耳を傾けながらの調整作業に日々苦心しています。

1年が経ち、責任範囲が広がるフェーズに。

C4で働いていて自分が成長したと感じるのは、責任の及ぶ範囲が自己完結しなくなってきたことです。学生時代は、頑張っても怠けても、結果が及ぶ範囲はあくまで自分で、努力は自己完結するものでした。けれども、社会人としてここC4で働くようになって大きく違うのは、言葉の障壁がある相手を鼓舞したり、ときには衝突する意見を調整したり、チーム単位で成果を上げなければならない点。自分ひとりで頑張ってさえいれば良いのではなく、仲間と連携して仕事を進める大切さを学んでいます。

失敗を確信した採用面接、悔しさと行動力が道を切り開いた。

就活のときの話です。一次面接はChief BioEngineerの星野さんが面接を担当してくださいました。星野さんは、通り一遍の質問をこなすのでなく、私の回答に対して何層も深堀りして質問を重ねられる方で、その質問攻めに、実はそのときほとんど答えられなかったのです。これまでの就活経験から、答えられなければ面接は通過できないと分かっており、実力を発揮しきれなかった悔しさだけが残りました。

その後、諦めきれなかった私は、答えられなかった質問に対して「リベンジ資料」を自分なりに用意していました。そんな最中、ありがたいことに一次通過の連絡があり、すぐにその「リベンジ資料」を採用担当者宛てに送ったことを覚えています。最終的に内定をいただけたのは、面接が上手くいったからではなく、もしかするとただでは引き下がらないガッツを評価していただいたのかもしれません。

ちとせで覆される、ひとりよがりなベンチャー企業像。

実は入社するまでちとせには、いわゆるベンチャー企業にありがちな「イケイケドンドン」なイメージを持っていました。自分はついていけるのだろうかという不安な気持ちもあったのですが、実際に入ってみてそういった印象は覆されました。新しい産業を本気で作るのだという気概、経済合理性を確かめながら進める堅実な経営、そしてパートナー企業や個人のお客様への礼儀と配慮をとても大切にしている会社で、自分が抱いていたひとりよがりなベンチャー像は全く無くなりました。

人生の座標は自分。ベクトルは一方通行ではない。

就活をしていると、周りがすごく動いているように見えるんです。自分の場合、何十社も内定をもらえず、あの人はもう就活を終えたとか、この人はもう何社も内定をもらっているとか、他人と比較して気持ちが萎え、身動きが取れなくなる期間が続きました。

そうではなく、自分を座標の中心に置き、とにかく動き続けることが大切だと思います。X軸の他にもY軸があります。横や斜めにも動いてみることが大切です。大手だけでなく中小企業やベンチャーにも挑戦したり、あるいはみんなが横並びでやっている就活から一度離脱してみたり、どこの方向に動いていても自分が中心である限りそれは前に進んでいるのだと、胸を張ってほしいと思います。

そんな選択肢のひとつに、ちとせという会社があればいいなと思います!



MATSURIプロジェクトやC4での活動の様子は、こちらからもご覧いただけます。

ちとせでは、多種多様なバックグラウンドのメンバーが活躍しています。
生き物の力をかりて、よりよい世界を、ワクワクする世界を一緒につくりましょう!
▶ちとせの採用ページはこちら

 

▷ 本連載の記事一覧
vol.1:ちとせのひと Vol.1 切江志龍 ~生き物と一緒に文化をつくる~
vol.2:ちとせのひと Vol.2 江口知輝 ~肉眼に見えないもので、世界を変える~
vol.3:ちとせのひと Vol.3 林愛子 ~夢物語じゃない~
vol.4:ちとせのひと Vol.4 山村芳央 ~選んだ道を正解にする~
番外編:番外編:ちとせのひとびと
vol.5:ちとせのひと Vol.5 山本安里沙 ~全員が主人公、尖っていても調和する~
vol.6:ちとせのひと Vol.6 片岡陽介 ~エボリューションの中で生きている~
vol.7:ちとせのひと Vol.7 坂口航平 ~ぶつからず、補い合う~
vol.8:ちとせのひと Vol.8 浅野真子 ~ひとつひとつが千年先に繋がっている~