MATSURI事業共創セッション、バイオエコノミー領域の様々なテーマについて議論を行う、MATSURIパートナー限定の場。MATSURIの共創事例や事業化に向けた取り組みを通じて、新たな共創のきっかけを生み出します。この記事では、MATSURI実行委員が、セッションの一端をお見せし、新たなビジネスチャンスを切り拓くヒントをお届けします。

MATSURIでは、サステナブルな原料として注目される藻類の大規模生産、バイオマスの用途開発、価値創出など、石油産業に代わる「藻類産業」の構築に向けてパートナーの皆様と日々奔走しています。今回のセッション※1では、株式会社資生堂の小口 希さん、花王株式会社の尾崎 達郎さんをお招きし、お二人が挑戦する原料開発の最前線についてを伺いました。

今回のセッションを通して感じたのは、遠い未来ではなく確実に今と地続きにある藻類産業を見据えて、真摯に取り組む確かな足取りでした。MATSURIの共創の輪に加わろうとするパートナーの背中を力強く押す、当事者ならではの熱い視点とセッションの核心を見ていきましょう。

※1 「MATSURI」パートナー限定 MATSURI事業共創セッション
日時:2026年6月23日(火)15:00~16:30
題目:「なぜ今、藻類なのか ー 資生堂・花王の意思決定と実践 ー」

目次

 

資生堂が、なぜ「藻」? なぜ MATSURI?

株式会社資生堂 ブランド価値開発研究所 開発推進センター 原料開発室 室長 工学博士 小口 希 氏


資生堂がサステナビリティ戦略として取り組む、適切な環境対応による社会課題解決。
大地の恩恵を受けながらまた我々も大地を豊かにする。
石油などの枯渇資源から循環資源へシフトする。

その取り組みは循環型ものづくりへの挑戦ともいえます。そして、かねてより本気でサステナブル原料開発に取り組んでいた資生堂が、さらなる技術を世界中から探索するなかで見つけたのが「MATSURI」でした。

様々な物質を生み出す藻類のポテンシャルに目をつけ、その活用にチャレンジする企業は多くあれど、MATSURIが目指すのは藻類を軸として多くの業界がつながり、産業をつくること。小口さんは、そんなMATSURIの挑戦について、真のサステナビリティを目指す資生堂の想いと調和するものと考えました。大企業ながら異例のスピードでMATSURI参画を決めたその背景には、同社が大切にする思想「至哉坤元 万物資生※2」との親和性、そして経営層も巻き込み社内を動かした「よりよい世界を実現したい」という熱意の伝播があったと強調しました。

※2 資生堂の社名の由来となった中国の古典「易経」の一節。大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか。すべてのものは、ここから生まれる。

「MATSURIの藻類を用いて化粧品原料を開発し実用化する。それは資生堂の成果で終わるものではなく、国内外へ、異業種へと活用を広げ、将来的にエネルギーや石油由来製品を藻類バイオマスから生みだし、脱石油を実現するための第一歩となるはず。」

最後に小口さんは、世界規模の環境貢献を巻き起こす、その第一歩を踏み出すことこそ資生堂の使命だと、力強く決意を語りました。

 

花王に学ぶ、実証フェーズへの展開 ー 藻類事業化のプロセス

 花王株式会社 バイオ・マテリアルサイエンス研究所 主任研究員 尾崎 達郎 氏(画像左)

洗剤、ボディソープなどに使われる界面活性剤等の原料となるラウリン系油脂。その供給は熱帯地域で栽培されるココヤシやアブラヤシ(パーム)に大きく依存しています。花王では持続可能な調達や原料の多様化に向けた様々な取り組みを進めていますが、将来の原料の選択肢のひとつとして着目したのが、油脂生産性に優れる藻類の一種、ナンノクロロプシスです。

ナンノクロロプシス

ナンノクロロプシスは本来ラウリン酸を殆ど生産しませんが、同社の育種技術であるセルフクローニング技術※3によって油脂中にラウリン酸を多く含む藻の株を開発し、実験環境では植物油脂と同様に精製が可能であることを確認しました。

※3 育種技術の一つ。異なる種類の生物の遺伝子(外来遺伝子)を導入することなく性質を変化させることができるため、一般的な遺伝子組換えとは区別されます。

ラボでの成功の次に立ちはだかったのが、社会実装に繋げるための大規模生産という壁でした。セルフクローニングによって創られた株が、自然界にいる従来の株と同じように培養できるのか。技術面のみならず、生産地域での法規制を受けないかといった点も重要でした。そこで藻類の豊富な培養技術と知見をもつちとせと組み、MATSURIでの協業がはじまりました。

花王のセルフクローニング株を用いた実証試験では、熱帯地域の屋外環境下での培養、そして油脂生産に成功。実用化に向けた大きな一歩を踏み出しました。 培養技術の他にも、セルフクローニング株の輸入や登録申請といった現地の法規制についても対応が必要でした。ちとせが長い年月をかけて構築したマレーシア当局との信頼関係を通じて、これらをクリアし、適法に育種株を扱う体制構築が整えられていきました。

一方で、尾崎さんは「安価・大量生産のために、生産プロセスの最適化や藻類バイオマスの有効活用が今後の重要なテーマである」とも語ります。生産技術や抽出技術の開発、そしてナンノクロロプシスの有効活用など、この協業に共に取り組むパートナーを求めていると力を込めました。

 

左から、ちとせ Senior Manager 林 愛子、資生堂 小口さん、花王 尾崎さん、ちとせ General Manager 佐々木 俊弥

 

MATSURIセッション内輪話

今回、小口さんと尾崎さんに「藻類のどこにロマンを感じますか?」と尋ねてみました。

小口さん「太古の昔から地球に暮らす我々の大先輩。太陽の光とCO2から荒野すら油田へと変えていく救世主。」
尾崎さん「ひとりで(単細胞で)エネルギー変換もCO2固定も油脂生産もやってしまう、そんな美しい緑。」

お二人とも藻類への熱いリスペクトが溢れており、揃って詩的…!!!と感じました。そうです。藻類に関わる人、というか、MATSURIに関わる人たちは誰しも、ワクワクする未来をつくるため新しいことに果敢に挑戦していく、そんなひたむきな情熱を胸に秘めています。

セッション後の懇親会でもビール片手に今後のビジネスチャンスにつながる熱い議論が各所で繰り広げられた模様。ここに集う多様な知見と強い意志が交差することで、社会実装へのロードマップはさらに加速していきます。

資生堂、花王それぞれが踏み出した一歩は、まさに地球規模の環境貢献へと繋がる確かな足がかりです。MATSURIでは、同じように一歩踏み出したい!と共創に加わっていただけるパートナーを大歓迎しています。

 

MATSURIとは
https://matsuri-partners.chitose-bio.com
MATSURIとは、“バイオエコノミーを推進する産業横断型の共創イニシアチブ”です。バイオ基点の社会構築を目指し、ちとせグループでは、微細藻類の産業利用をはじめ、AIを活用したバイオものづくり、資源循環、持続可能な農業など、様々な領域で事業を展開してきました。こうした挑戦を一企業で終わらせることなく、確かな産業として根付かせるために生まれた共創の場がMATSURIです。パートナー企業や自治体、教育機関を巻き込み、MATSURIの輪は今日も広がり続けています。その名の通り、人類史に残る「お祭り」として、共に未来をつくる仲間を募集中です。お問い合わせはこちらから。