ホルムズ海峡をめぐる緊張が、エネルギーや物流、日用品の価格を通じて、私たちの暮らしにも影響を広げています。

私、MATSURI実行委員の廣井も、知り合いの農家さんから「塩ビ管がホームセンターから消えている。ナフサ不足の影響で、トンネル栽培用ビニールも約30%値上がり。この冬は野菜価格が上がりそう」と昨今の情勢についてお聞きしています。

昨今の状況は「ナフサの目詰まり」というキーワードで日々報じられていますが、メディアでご活躍されているエネルギーアナリストの大場紀章さんはどのように見ているのでしょうか?大場さんを「MATSURI」 パートナー限定セッション1 にお招きし、産業の現場が感じている石油由来製品の供給不安、化石資源依存からの転換の必要性、その実態を解説いただきました。そして、エネルギー安全保障の観点や、ポスト石油時代を支える“資源”という観点から藻類を捉え直し、MATSURIにおけるその価値をともに考えました。

※1 「MATSURI」パートナー限定セッション
日時:2026年5月20日(水)15:00~16:20
題目:「正直MATSURIプレゼンツ ホルムズ海峡危機の今、微細藻類の価値を見直す」

目次

 

インパクトは石油ショックの2倍?海峡危機の規模感と「ナフサの目詰まり」の実態

「今回の危機は、過去の石油ショックと比較しても極めて大きな規模です」と大場さん。2026年5月現在、ホルムズ海峡の閉鎖から2か月半が経過し、「累積の供給途絶量で見ると、すでに第二次石油ショック(1979年〜)の2倍以上となっており、近代石油利用170年の歴史において史上最大の危機と言えます」と説明されました。

一方で、日本では迂回輸送ルートの確保や各国の増産、備蓄の活用によって、ガソリンなど燃料供給は比較的安定しており、私たちの生活への直接的な影響は限定的です。その一方で課題となっているのがナフサです。ナフサはプラスチックや塗料、接着剤など、私たちの暮らしを支えるさまざまな製品の原料で、現在報道ではサプライチェーンの過程で「目詰まり」が起こっていると言われています。

ナフサは、国家備蓄の対象ではなく、在庫にも限りがあります。そのため供給不安が広がると、「念のため確保しておこう」という動きが連鎖し、実際の需要以上に需給が逼迫しやすくなります。大場さんは、この現象を「ブルウィップ現象」と説明。小さな買い増し行動がサプライチェーンの上流で増幅され、実際には供給があるにもかかわらず、品薄感が生まれてしまう現象です。今回の危機は、燃料だけでなく、社会を支える素材供給の脆弱さにも目を向けるきっかけとなっています。

 

石油の価値はますます高く。燃料にしてはもったいない!



2050年には石油採掘に必要なエネルギーが供給量の半分に達する見込みの中で、大場さんは、石油の価値は燃料から高付加価値な石油化学製品へシフトすると言います。これまで“石油危機”というとガソリン不足が注目されてきましたが、今回はむしろ素材系の化学製品の重要性が浮き彫りになりました。医薬品、化粧品、半導体材料など、使用量は少なくても代替が難しく、高い付加価値を持つ製品群は、今後ますます重要になると言います。石油を単なる燃料として消費するのではなく、代替の効きにくい高付加価値分野へどう活用していくか──石油の価値そのものを見直す視点が共有されました。

 

MATSURIパートナーが感じる、ホルムズ海峡危機の影響

参加者からは、現場でのリアルな声も共有されました。

・ゴム関連事業では、工場の稼働率調整や価格見直しの話も出ており、研究開発予算への影響も感じています。
・普段使っている溶剤の供給不足で、別メーカー品に切り替えて実験を進めています。クリーニング工程の遅れなど、サプライチェーン全体への影響も見え始めています。

一方で、

・自部署ではまだ直接的な影響は見えていないものの、社内では対応が進んでいるようです。

といった声もあり、影響の現れ方が業種や立場によって異なることも印象的でした。

 

地球が1億年かけて作った石油を藻でつくる

注:藻類から作ることができる物質が緑色で表示されています。

藻類の可能性は、二酸化炭素を削減できることにとどまりません。大場さんは、微細藻類はパーム油や大豆、木質など他のバイオマスと比べても、最も幅広く石油製品の代替が可能だと言います。それ以上に、石油ですら作ることのできないフィコシアニンやアスタキサンチンなどの高機能成分も生み出せる。そして「地球が1億年かけて作った石油を1か月で培養できるとすれば、1億年の備蓄に依存しない新たな選択肢になる」と、その可能性を語りました。

藻類の価値は、環境への貢献にとどまりません。藻類特有の成分を活かした新規事業が生まれ、産業そのものが盛り上がっていく。そして、そんな藻類産業が育っていくためには、石油代替そのものに価値を置く仕組みづくりが鍵になると大場さんは語ります。大場さんは「藻類クレジット」という新たな考え方を提言。二酸化炭素の削減量に応じてクレジットが付与される「カーボンクレジット」とは異なり、藻類を消費していること自体に価値を置きその使用量に応じてマスバランスのクレジットを割り当てる仕組みです。

エネルギー安全保障、産業基盤、そして新たな経済の仕組みづくり。石油に依存しない社会への道筋が、藻類という切り口から見えてきたセッションでした。 

 

MATSURIセッション内輪話

「塗料」が足りない。「農業用ビニール」が足りない。 私たちは、自分の生活やビジネスに支障が出て初めて、その背後にある、化石資源に依存した産業構造に目を向けるのかもしれません。

このような「危機」があってもなくても、MATSURIは、限られた化石資源からの脱却に取り組み続けています。そして、その挑戦には、パートナーの皆さまとの協力が不可欠です。

セッション終了後には、今年度からスタートした懇親会を開催しました。居酒屋で一つのテーブルを囲み、本音で語り合いながら、担当者それぞれの背景や想いにも触れられる時間となりました。

  ──企業の皆さまの人となりを知ることで、事業共創に向けた信頼関係の土台づくりにもつながった(とある参加者の声)

パートナーの皆さまとともに、MATSURIだからこそ生み出せる共創の場を、これからも育んでいきます。 

 

MATSURIとは  
https://matsuri-partners.chitose-bio.com
MATSURIとは、“バイオエコノミーを推進する産業横断型の共創イニシアチブ”です。バイオ基点の社会構築を目指し、ちとせグループでは、微細藻類の産業利用をはじめ、AIを活用したバイオものづくり、資源循環、持続可能な農業など、様々な領域で事業を展開してきました。こうした挑戦を一企業で終わらせることなく、確かな産業として根付かせるために生まれた共創の場がMATSURIです。パートナー企業や自治体、教育機関を巻き込み、MATSURIの輪は今日も広がり続けています。その名の通り、人類史に残る「お祭り」として、共に未来をつくる仲間を募集中です。お問い合わせはこちらから。