少年漫画を読んでいると、時折、戦闘前のシーンや何かすごいものが現れる直前で背景に「ゴォォォッ…!」と文字が舞う描写がある。10月17日に開催された「2023年度 MATSURI 上半期全体会」で、私はそんな地鳴りというか、風が吹くのを感じた。大げさでなく!

日本を代表する企業から対面・オンラインで300名以上が集まり、ちとせのビジョンに賛同し、MATSURIに懸けてくださっている。その想いを本人たちの口から直接耳にしたのだ。全体会では、ちとせグループ代表藤田からのMATSURI活動報告、Chief BioEngineer星野からのC4(CHITOSE Carbon Capture Central、マレーシア サラワク州の微細藻類生産設備)の進捗報告が行われ、続いての登壇では、MATSURIの外から私たちを見守る立場として東京大学 五十嵐教授に気候変動問題について解説いただき、またMATSURI参画企業を代表する3名の方にお話いただいた。その他にも個々で話す機会のあった方々に共通して、私は同じ色の目の輝きを見た。今日は、私がその日感じた高揚感をぜひ皆さんにも共有させていただきたい。

※ニュースサイトでの全体会開催報告はこちら
「MATSURI全体会、初の対面開催! オンラインと合わせ300名以上の方にご参加いただきました」

■ご登壇 講演順。左上:東京大学大学院 農学生命科学研究科 五十嵐教授、右上:株式会社資生堂 岡部 副社長 兼 チーフマーケティング&イノベーションオフィサー、左下:武蔵塗料ホールディングス株式会社 福井代表取締役、右下:株式会社三井住友銀行 神元専務執行役員

東京大学大学院 農学生命科学研究科 五十嵐教授
五十嵐教授には、科学的真贋を見極める重要性を説いていただいた。教授は元米国副大統領のアル・ゴア氏が創設した「The Climate Reality Project」の認定資格、Climate Reality Leaderを持ち、その知見から「サブプライム炭素バブル」というキーワードを用いて日本はいつまでこの「バブル」に投資するのか(化石燃料に依存した経済活動を行うのか)と憂いた。

また昨今のSDGs詐欺、いわゆる「グリーンウォッシュ」についても、科学の大原則「エネルギー保存の法則」、「エントロピー増大の法則」、「質量保存の法則」に逆らうとし、強く批判された。「現在世界中の研究機関で、大気中に薄く広がったCO2をかき集め、資源として使える濃度にし、いかに効率よく物質に還元するかの勝負が行われている。現状として、エネルギー収支もCO2収支も釣り合った成果を出せている企業はほとんど存在しないのだが、科学的にありえない数字を成果として公開する企業も実は国内外にあまた存在する。真贋を見極める努力を怠ると、下手をすれば彼らの欺瞞の片棒を担ぐことになってしまう。同時に、科学に正直に取り組むちとせと、それをサポートするこれだけの規模のMATSURI参画企業の取り組みは素晴らしいものだ」との講演内容に、一同すっと背筋が伸びたのを感じた。

株式会社資生堂 岡部 副社長 兼 チーフマーケティング&イノベーションオフィサー
岡部副社長は、株式会社資生堂(以下、資生堂)が目指す世界観に触れ、ちとせとMATSURIに懸ける想いを語ってくださった。「資生堂の社名の由来であり創業の理念『至哉坤元 万物資生(大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか、全てのものはここから生まれる)』と、ちとせグループの『生き物たちの力と共に 千年先までもっと豊かに』とのビジョンは調和する。そして人は人に惚れる。C4の開所式で目にしたちとせのメンバーたちの確かな技術力と、藤田さんの熱い涙を見て心動かされた」と語った。

そして岡部副社長は「日本企業の価値を世界に届けたい」というご自身の企業人としての夢についても聞かせてくださった。日本企業は世界で勝てる高い技術力や価値を持っている。その中でも究極の循環型資源である藻類で産業を構築することでゲームチェンジを実現し、日本企業の価値をグローバルにしたいとのビジョンを明かした。「循環型社会の実現は『万物資生』を理念に掲げる資生堂がやらねば誰がやるのか。まずは資生堂が突っ走ります。」と力強く宣言し、会場の一人ひとりの心に熱が注がれるのを感じた。

武蔵塗料ホールディングス株式会社 福井代表取締役
その熱をすぐさま表現したのは、武蔵塗料ホールディングス株式会社(以下、武蔵塗料)の福井代表だ。「まずは資生堂が突っ走る」の言葉を継ぐように「資生堂と一緒についていきたい」と表明し講演をスタートさせると、会場からは自然と賛同の拍手が沸き起こった。

福井代表の話は約10年前、藤田との出会いに遡る。初めて会った際「藻でジェット機を飛ばす」と語っていた藤田の印象を「ずいぶん変わった人がいるものだと思った」と回顧した。そこから10年の間に、着実にビジネスプランを立て、資金を集め、この会場の皆さんに声をかけ、一つ一つ実現してきている。千年先の未来を想像し、今の自分たちにできるベストを尽くしている。その藤田が率いるちとせの軌跡を目の当たりにし「この人たちはホンモノだ。千年かかっても絶対にやり遂げる」と確信したと明かしてくださった。

福井代表はこうも語った。「誰かが始めないと文明の発展はない。だから今私たちはやることにした」と。この先、武蔵塗料とちとせは藻類バイオマスを使った建築用塗料、化粧品容器用塗料等の開発を進め、色と機能で社会を豊かにしていく。福井代表の情熱と決意に私は鼓舞され、会場にも同じ熱が伝播したように思う。

株式会社三井住友銀行 神元専務執行役員
株式会社三井住友銀行(以下、SMBC)はこのプロジェクト全体を金融機関としてサポートしてくださっており、今年の春にはNEDOのグリーンイノベーション基金への共同申請も行っている。

銀行では「ヒト・モノ・カネを見ろ」と指導する文化があるという。「天才肌でありながら実直にビジネスを進めてきた藤田代表、元グローバルバンカーで確かな実績を持つ今井CFO、藻類事業を地道に作り上げてきた星野CBEを筆頭に、ちとせは従業員全員がビジョンに共鳴し各部門に精通したスペシャリストである。だからこそSMBCの大切なお客様にもちとせを紹介できる」と語った。

来年の干支は甲辰(きのえたつ)で、「芽吹きの年」となるという。まさに藻類産業ツリーのようにいくつもの枝から次々と蕾が芽吹き、大きな花を咲かせるまでの年になるそうだ。この会場に集うMATSURI参画企業の技術を結集させ、サステナブルな世界の実現に向けて飛躍の年になることを期待していると背中を押してくださった。神元専務の語り口は粛々と、しかし力強く、ちとせとMATSURI参画企業への信頼と期待を感じさせるものだった。

藻類産業ツリー

■懇親会

登壇の後は、日本ガイシ株式会社、丹羽副社長による「開会の挨拶」により懇親会がスタートした。丹羽副社長は、自身の研究者としてのバックグラウンドを思い起こしながら「ちとせと一緒に課題解決に向かって歩みたい」と、寄り添うような言葉を掛けてくださった。加えて今年8月にC4を訪れた際のことを振り返り、「現場で働くちとせメンバーの様子を目にし、労を惜しまず課題に向き合うその姿が出資を決める後押しとなった」と、現地で汗を流すメンバーに花を持たせてくださったことにも私は胸を打たれた。


こうした温かな雰囲気で幕開けした懇親会には約200名が参加し、MATSURIの最前線で活動するメンバーを中心に、普段裏方の業務を担う者や、藻類事業と関わりのないメンバーもこの「お祭り」の熱気を共有した。会場のどの顔を見ても先ほどの登壇を聞いたばかりのせいか皆どこか上気した面持ちで、何より嬉しかったのは、目を輝かせているのがちとせのメンバーだけではなかったということだった。

また会場の一部を展示スペースとし、MATSURIの「百人組手」
の藻プロダクトや、藻類由来食品としてスイーツなどをご紹介した。その他にも、医療用細胞、ヘルスケア、バイオ生産、ちとせアグリベースのメンバーも会場に展示を設け、各々の取り組みを皆様にアピールすべく活発に交流を図った。研究に使用する実機をお見せしたりポスターで研究説明を行ったりと、各事業のメンバーたちが嬉々として自分の仕事を紹介する姿が印象に残った。どのブースも常に人だかりができており、MATSURIをきっかけにちとせの藻類以外の事業や、企業文化そのものに関心を持ってくださったのではないかと思う。今後思わぬ形で商機が生まれれば、これ以上のことはない。
■最後に
総括で藤田は、決して簡単ではなかったこれまでの道のりを振り返った。わずか数人でラボで藻類の研究を始めたときの社内の反応、ぶつかってきた困難、そして今日、これだけの企業の皆さまにサポートしていただけるようになったこと。ただしMATSURIがこれだけの規模になった今でさえ、大きなことから小さなことまで課題は山積みであるということ。しかしこれまでも困難に直面してはこつこつとひとつずつ解決してきたのだから、これからもそうして実直に向き合っていくのみだと。

また星野はこの日の登壇で「問題に直面することは幸せなこと。課題は改善に向けたチャンスだ」という言葉を残した。そういえばエジソンも似たようなことを言っていた。「私は失敗したことがない。 ただ、1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」1万通りの上手くいかない方法を見つけたのち、エジソンは白熱電球や蓄音機で知られるような数々の発明で世界を変えた。

どんな少年漫画だって、マーベル映画だって、ヒーローが世界を救うまでに「起承転」がある。そしてそこには必ず色んな形でサポートしてくれる仲間がいて、色んな気持ちをぶつけ合っている。ちとせを信じ、MATSURIに想いをのせてくれた約70機関の皆さん、心からありがとうございます。そしてこれから出会う未来のパートナーの皆さん、私たちと一緒に1万通りを乗り越え、世界を変える仲間になっていただけたら嬉しいです!

MATSURIプロジェクト
https://matsuri.chitose-bio.com/
藻類の大規模生産と事業化に強みをもつちとせグループが主体となり、日本を代表する企業群・行政と共にこれまで誰も成し得なかった藻類産業を構築するプロジェクト。MATSURIの名の通り、人類史上に残るお祭りとするべく、藻類の活用を通じたサステナブルな社会づくりを構築します。MATSURIでは、藻類産業の構築に向けて、業種や規模を問わず、更に様々な企業の皆様のご参加をお待ちしております。お問い合わせはこちらから。