「藻」と聞いて、何を思い浮かべますか?池に漂う緑色の物体、あるいは昆布やワカメといったお馴染みの海藻?
今、そんな藻類(そうるい)が、未来の暮らしを支える素材として注目されています。2025年大阪・関西万博、日本館では藻類がテーマのひとつ。そして、ちとせグループが主導するバイオを軸にした産業づくりを進める共創プロジェクト「MATSURI」は、日本館ファクトリーエリアで「『藻』のもの by MATSURI」をプロデュースしました。このショーウィンドウでは、藻類を素材にしたアパレル、化粧品、食品、塗料など、さまざまな「藻の物」が一堂に並びます。
ショーウィンドウ右上の企業一覧に名を連ねる一社、三井住友銀行。「社会的価値の創造」を追求するこの企業は、藻類が持つ可能性とバイオエコノミーの実現に向けたMATSURIに共感し、このたび協賛くださいました。本記事では、三井住友銀行がMATSURIを通じて見出した新しい産業の在り方や日本館の展示に込めた想いをご紹介します。
株式会社三井住友銀行
三井住友銀行は、SMBCグループの一社として、三井・住友の事業精神を受け継ぎ、社会課題の解決を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを経営理念としており、中期経営計画では、社会的価値の創造を経営の柱に据えています。その中で、「環境」をはじめとする5つの重点課題を定め、その解決に向けて、社員一人ひとりが誇りと主体性を持ち、お客さまとの事業共創・開発、新たな技術の開発や産業の育成に挑戦しています。経済の成長に加え、社会課題の解決を目指し、そこに生きる人々が幸福を感じられる「幸せな成長」の実現に貢献していきます。
―― 今回、協賛を決めた背景について教えてください。
金融機関 × 藻類で叶える「幸せな成長」
世間一般の感覚からすると、「金融機関」×「藻類」という組み合わせを不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、三井住友銀行は、2023年にMATSURIに参画する機会を得て以降、ちとせグループ様を中心とした藻類産業の構築に向けた取り組みに携わらせていただいています。
SMBCグループでは、2023年度から始まった現在の中期経営計画を「Plan for Fulfilled Growth」と位置付け、「社会的価値の創造」を基本方針の一つとしています。これは、気候変動などグローバルな社会課題が深刻化している中、企業市民として社会課題の解決を主導することで、経済の成長とともに社会課題が解決に向かい、そこに生きる人々が幸福を感じられること、すなわち「幸せな成長」に貢献することを掲げているものです。
こうした、持続可能な経済成長の実現を可能にする上で、多様な有価物を効率的に生成でき、化石資源由来製品の代替だけでなく幅広い用途への活用が展望される藻類のポテンシャルに注目しており、バイオエコノミー実現の一助を担いたいと考えています。
―― 万博やMATSURIに関わる中で、初めて知ったことや自社内での意識の変化などがあれば教えてください。
バイオエコノミーの可能性は、お客様のすぐそばに
MATSURIへの参画を通じてまず驚いたのが、藻類が持つポテンシャルの高さ、用途の広さです。ちとせグループ様には、三井住友銀行の営業担当や社会的価値創造に携わる部署向けにセミナーを開催いただいたこともありますが、脱炭素社会を実現する上でのインパクトの大きさだけでなく、当行がお取引をさせていただいている様々な業種のお客さまが実はバイオエコノミーの一端を担いうるという説明を伺い、目から鱗が落ちる感覚でした。
――貴社の事業領域から見て、藻類産業の中で担える可能性のある役割についてどのようにお考えですか?
金融の力で、新しい産業づくりを支援
SMBCは、藻類ビジネスにおいて直接的に必要となる技術を提供したり、藻類を原料とする自社製品のサプライチェーンを構築したりすることはあまり想定していませんが、金融機関として、藻類産業の構築に貢献していきたいと考えています。
例えば、藻類の持つ幅広い用途可能性を最大限活かし、産業界の脱炭素を実現していくためには、様々な業種のパートナーを繋いでいくことが不可欠です。そうしたバリューチェーンの構築の過程において、SMBCの持つ顧客基盤やファイナンスを通じたリスクテイクを活用しながら新しい産業づくりを支援していくことは、金融機関の使命だと考えています。

―― 日本館展示への参加や、万博への関わり、あるいはMATSURIへの参画を通じて、どのような未来や変化を期待していますか?
日本の再成長、そしてバイオエコノミーを世界へ
藻類を中心としたバイオエコノミーの実現に向けて、更に多くの企業や個人にとって藻類を身近なものに思っていただくことは、非常に重要だと思います。そういった観点で、水の中に入っていた藻類が、航空機の燃料になったり、ペットボトルになったり、食べ物になったりと、様々な用途に使われることを手に取って実感できる万博のパビリオンという場の意義は大きいと考えています。
また、SMBCグループにおいても主体的に取り組むべき重点課題の一つとして「日本の再成長」を掲げていますが、日本館という場所において、日本の企業が連携して新しい世界観を世界に向けて発信し、その実現に向けた取り組みにSMBCグループとしても携わらせていただいていることを誇りに思います。
―― 最後に、読者の方(万博来場者や未来世代)に伝えたいメッセージ、貴社がアピールしたいことなどあればお聞かせください。
地球は子孫から借りているもの
この写真は、SMBCグループが設立以来支援している北海道の富良野自然塾にある石碑で、「地球は子孫から借りているもの」と刻まれています。
SMBCグループは、サステナビリティ宣言において、サステナビリティを「現在の世代の誰もが経済的繁栄と幸福を享受できる社会を創り、将来の世代にその社会を受け渡すこと」と定めていますが、我々のサステナビリティ宣言と、この石碑の言わんとすることは、本質的に同じと考えています。
緑豊かな地球は、そのままの姿で子孫へ受け渡さなければなりません。借りているモノなのだから、汚したのならキレイに戻さなければなりません。人々が幸せを感じられる環境・社会をつくり、子孫へと受け渡していかなければなりません。
「千年先の当たり前をつくる」ことを掲げるMATSURIの展示を通じて、是非皆様にも、「幸せな成長」の先にある未来像に少しでも想いを馳せていただければ幸いです。