MATSURI事業共創セッション、バイオエコノミー領域の様々なテーマについて議論を行う、MATSURIパートナー限定の場。MATSURIの共創事例や事業化に向けた取り組みを通じて、新たな共創のきっかけを生み出します。この記事では、MATSURI実行委員が、セッションの一端をお見せし、新たなビジネスチャンスを切り拓くヒントをお届けします。

自社でこだわりの健康食品や化粧品を開発した。素晴らしい技術を持っている。それなのに、いざ市場に出してみると、莫大な広告費をかけられた他社製品に埋もれてしまう。本当に良いものを開発したはずなのに、思うように届かない。

そんなもどかしさを感じたことはありませんか?

「良いものを社会に届けたい」というパートナー企業の皆様の熱い想いに日々触れているMATSURI実行委員にとっても、この状況は非常に歯がゆい現実です。

どれだけ素晴らしい製品やデータがあっても、従来のマスマーケティングだけでは伝えきれなかった本質的な価値。その価値が正当に評価され、必要とする人に確実に届く構造へと変革していく。

今回のセッション※1は、MATSURIとして初のお披露目となる「ヘルスケアMATSURI」をテーマに、これまでのヘルスケア業界が抱えてきた構造的な歪みにCEO 藤田が切り込みました。プロ野球チームの横浜DeNAベイスターズもいち早く取り入れている、ちとせのヘルスケアデータビジネスを紹介します!

※1 「MATSURI」パートナー限定 MATSURI事業共創セッション
日時:2026年7月23日(木)15:00~16:20
題目:パーソナライズされたデータをビジネスに! 「ヘルスケアMATSURI」

目次

「正論」も「効能」も売りにくい、ヘルスケアビジネスの構造的ジレンマ

生活習慣病大国とも言われる日本。日本人の50代から70代の死因を見ると、がんが約40%、心疾患や脳血管疾患などの血管系疾患が約20%を占めており、これらはその多くが日々の生活習慣に起因しています※2。これらを未病の段階で防ぐことは、個人の医療費や社会保険料、ひいては国の財政にも関わってくる重要なテーマです。

藤田は既存のヘルスケアビジネスが抱える最大のジレンマをこう指摘しました。
「『脂っこいものを食べるな』『毎日運動しろ』といったアドバイスは、100%正しいけれどつまらない。だから多くの人は無視してしまうんです。こうした制限や義務を強いる『面白くない正論』を、一般の人に向けて持続的なビジネスにするのは非常に難しいのです。」

比較項目医療非医療(ヘルスケア)
対象者健康ではない人健康な人
提供者・資格法的な資格を持つ人のみ特別な医療資格は不要
提供できるもの法的に認められた特定の商品・サービスのみ一般向けの商品・サービス
構造上の制約厳格な法規制や制度に縛られ、健康な人への予防ビジネスとして展開しにくい直接的な効果を謳えない

さらに問題なのは、ヘルスケアビジネスを取り巻く社会構造です。 明確な効果を謳って「医療」の領域に入ろうとすると、医師資格や厳格な法規制に縛られ、対象も「すでに病気にかかった人」に限定されてしまいます。そのため、健康な人を対象とした未病・予防ビジネスとしては成り立ちません。

かといって「非医療」にとどまれば、今度は法律上「効く」と直接謳うことが許されないというジレンマが生じます。その結果、商品そのものの実効性や科学的な価値ではなく、投入した広告費の多さや見せ方のうまさだけで勝負が決まってしまう、構造的なねじれが生まれてしまっているのです。

どれだけ真面目に良い製品や技術を作っても、現行の仕組みのままでは「正論で無視されるか」「広告合戦に巻き込まれるか」の2択になってしまう。これこそが、多くのヘルスケアビジネスが直面している壁の正体でした。

 

目指すべき健康のゴールは1つじゃなかった!

では、この構造をどう突破するのか。藤田が提示したのは、エビデンスによる「健康の再定義」でした。

これまでの健康診断や一般的なヘルスケアのアプローチは、常に「標準値からどれだけ離れているか」を測り、平均的な健康状態へ近づけることを目指していました。しかし、最先端のバイオテクノロジーやAIの発展によって腸内細菌や体質の違いが科学的に解明されることで、人によって異なる健康ゴールが設定できるようになったと説明します。

 

行動も構造も変える!?「ちとせメソッド」

さらに藤田は、消費者の選択とヘルスケアビジネスの構造そのものを変えうるプラットフォーム「ちとせメソッド」の構想を語りました。

ちとせは国の有力研究機関がもつ食生活・生活習慣・腸内細菌叢といった大規模なヘルスケアデータを活用し、この個人差を読み解くAI技術の開発に取り組んでいます。藤田は、「個人のヘルスケアデータと、大規模なヘルスケアデータを掛け合わせることで、AIが個々人に合う商品をおすすめする。この仕組みが実現されると、消費者は自分にとって本当に価値があるモノを選べる世界になる」と語りました。

実際、美容や健康のために腸内環境を整えようとしている筆者自身、世に溢れる情報のあまりの多さに何を選べばいいか分からず、何度もくじけそうになります。そんな時、自分のデータに基づいて「今のあなたにはこれが最適です」と示してくれる仕組みがあれば、圧倒的にラクで心強い存在になると、いち消費者として強く共感しました。

そしてこれは企業側から見れば、マーケティングの革命なのだと理解しました。ちとせメソッドに乗ることで、マス広告の消耗戦から脱却し、データを介して、自社製品が「それを本当に必要としている顧客」のもとへダイレクトに届く未来が期待できます。

 

おわりに

体に良い「ヘルスケア分野」のビジネス構造の課題について議論してきたセッションでしたが、実は地球に良い「環境分野」のビジネスもヘルスケアビジネスに通ずる、構造のねじれがあると藤田は指摘します。ヘルスケアと同じように、環境分野でも本質的な価値は1つの指標では表せません。見せ方が上手なものが目立ってしまい、結果として「SDGs」といった言葉への不信感ばかりが大きくなってしまっているのではないでしょうか。

ちとせのヘルスケア領域で構築した「データを介して本質的な価値を届け、納得して選んでもらう仕組み」が、環境分野のビジネスにも応用できると藤田は語ります。この「ちとせメソッド」という仕組みは、将来的に地球環境に貢献する商品や体に良いものを、データに基づいて売っていくための共通基盤にもなり得ます。

ヘルスケア領域の内容でありながら、MATSURIが目指すバイオエコノミー全体の壮大な可能性を感じるセッションとなりました。人や社会、地球にとって良いことが評価され、それによって経済も資源も循環する未来を創るために、これからも全力を注ぎ続けます。

※2 厚生労働省 令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況を基に50代〜70代の主な死因と構成割合(全体合算)を計算すると、がん 約39.0%、心疾患 約12.8%、脳血管疾患 約 6.7%

 

MATSURIとは
https://matsuri-partners.chitose-bio.com
MATSURIとは、“バイオエコノミーを推進する産業横断型の共創イニシアチブ”です。バイオ基点の社会構築を目指し、ちとせグループでは、微細藻類の産業利用をはじめ、AIを活用したバイオものづくり、資源循環、持続可能な農業など、様々な領域で事業を展開してきました。こうした挑戦を一企業で終わらせることなく、確かな産業として根付かせるために生まれた共創の場がMATSURIです。パートナー企業や自治体、教育機関を巻き込み、MATSURIの輪は今日も広がり続けています。その名の通り、人類史に残る「お祭り」として、共に未来をつくる仲間を募集中です。お問い合わせはこちらから。